“それにしても、智くんたらいつまで松本さんのお宅に居るつもりかしら?新学期も始まるのに”
‘お世話になっている以上、お礼を持って行きがてら、連れて帰ってきたらどうか?’
両親の会話が、聞こえてきた。
確かに、うちの親戚を他人に押し付けていると思われたなら、オレもマズイと思い始めた。
「ねぇ、同じ学校の同級生だから、わからないでもないけど……なぜよりによってアイツ(松本)が友人なの?いくら親しくても、家に泊まり込むってのもどうかな?」
と、言うと
“まぁ、呆れた。元はと言えばあなたが、智くんを嫌がったんじゃないの?”
なんて、とんでもない事を言い出す始末。
“まぁ、そうよね〜。学校も始まる事だし。。後で、どら焼き持って、ご挨拶に行ってくるわ。”
‘あぁ、そうしてくれ’
「オレ、アイツの事…ちゃんと聞いてないんだけど。」
“あぁ、そうだったわね。あなたがいない間に、麗子さんが肺癌で入院してて、親戚を調べた病院から、お父さんに連絡があったのよ。”
‘麗子は、離婚して日本にいたんだ’
「離婚……」
‘相手(元ご主人)の家は、もう新しい家族がいて……麗子は、智くんを連れて異国の地で苦労したらしい。’
「でも、異国の地って言うけど…知ってて駆け落ちしたんでしょう?」
“まぁ、冷たい言い方”
だって…本当の事じゃん。
‘それでも、最後に会えて良かった……まだ、智くんは未成年だし。麗子の忘れ形見だ。連れてきて良かったと思っている。翔に相談しなかったのは、悪かったけれど。’
“智くんね、あなたより1歳年上だけど、1学年下のクラスに入れていただいたの。受験するにも国語力が、足りなくて……。”
“あぁ、こんな時間だわ。急がなきゃ……とにかく翔。帰ってきたら智くんと仲良くしてね!”
なんでオレが居候に気を使わないといけないんだ…………
「無理だよ」