そっと家に入ったつもりだったのに、オレを見つけた智くんが、走って飛びついてきた。

こんな感情をむき出しにした彼を見たことがない。

驚きと戸惑いの中で、彼を抱きしめた。



震えている……


「サトシ…寒気がするの?」

と、聞くと

ううん。とばかりに、首を振っている顔が泣いていた。

「昨日から、連絡もしないでごめんね」


「病院に行った時は、まだ話が出来たんだ。サトシのこと聞いてきたから」

『オレのことを?』

「沢山彼の作品を見れて良かった……と。満足気だった…そして、皆に見守られながら静かに息を引き取った。」

『え?お祖父さん、死んでしまったの?!』

「あれ?マネージャーから聞いてない?」

 ちょっと動転した

祖父が亡くなった事で、智が泣いていたと思ったからだ

「サトシ……?」

『ウソ……嘘でしょ…』

「サトシっ」

『お祖父さん、お別れも出来ないなんて…嫌だっ』


サトシは、床に崩れ落ちて泣いた

そんなサトシを抱きしめて、彼の唇を烈しく奪った

『うっ…、』

ぴちゅ…『はぁ…』


シン…と静まり返ったリビングで、唾液にまみれたキスの音だけが聞こえる



こんな時に、不謹慎だとは思うが、サトシを落ち着かせたくて、思わずとっさに出た行為だった。

「サトシ、落ち着いて。今日は、ずっと側にいるから」

言いながら、自分でも抑えられず

彼の首に、沢山のキスを落としていく


『しょお……僕は……』