「智くん、ホント、ホントにゴメン……」
翔くんは、事務所の人にコッテリ怒られたらしく、今日の祖父ちゃんのゴリ押しを何度も謝った。
『もう、良いよ……』
「本当に、ただの東京見物がてらの六本木だと思ったんだよ。まさか、仕事に繋がる話なんて……」
県のプロジェクトという大きなバックがあったせいで、事務所も穏便に済ませたかったらしいが、芸能界にもルールってのがある。
多分、孫の友達……
ぐらいの感覚だったのだろうか
翔くんが、ビールを片手に
「事務所も、智くんの復帰は個展から…とか思っていたかもな。それを、いきなり群馬県でやっちゃったら、マズイだろうし。」
『え?そうなの?』
「そうだよ。君が復帰する時は、嵐なのか?アーチストからなのか?事務所からしたら、繊細で難しい問題なんだぞ。」
オレは、芸能界には…
復帰なんか……
しないつもりだった。
……RRRR
「ヤバい!親父だっ」
翔くんは、余程お父さんが怖いらしい 電話に飛びついたと思ったら、部屋から出ていってしまった。
でも
オレ…興味ある
素人のオレが草間さんと……
共同出品とか
予算と都合がつけば、この先奈良さんも参加してくれるかも知れない
なんていう話もあって
ずっと事務所の友達ばかりだったから。
違う世界も見てみたい……
ココ最近、そんなことばかりが浮かんできた。
キャンプがオレの人生をガラリと変えてしまった時みたいに。
だから
芸術家として、認められるなんて…
雲にも乗るような気持ちだった
翔くんは怒っていたけど、オレはお祖父さんには、物凄く感謝してる。
大切な孫を奪った「嫌な奴」と思われていても、仕方ないのに。
1人の芸術家として見てくれたんだ
それが、めちゃめちゃ嬉しかった。