あぁ、やっぱりだ。

智くんがピリピリしている。
楽屋では全然口をきいてくれない。
それは、俺だけじゃなくて、メンバー全員も感じていること。
〔ただでさえ、無口なのに舞台が入ると、より一層無口になるんですよ〕
番組の本番でニノがぼやく。
本人は聞いているのか、カメラが大野くんを大きく映し出しているのに、全然反応もしない。

きっと「TRUEWEST」のせいだ
彼の舞台を喜ばなきゃいけないけど、毎度のこと。
ものすごい孤独感が押し寄せる。

そんな彼に聞いてみる
「智くん、今夜ご飯でもどう?かな……
『無理っ……』
えっ?
いつもより、反応が怖い
すると、向き直って
『翔くんさぁ、今回は舞台が終わるまで、会えないから』
大事なことを、さらっと言う
「えっ?どういうこと?」
『翔くんのこと。傷つけたくないし。なんか自信がないんだよ。』

どうしたんだろ?
「智くん……どうしたの?何で俺が傷つくんだよっ!」
『いいからっ!』
智くんが、走っていく。
どうしたんだろう。

〔大野さん…〕
振り向くとニノだった。
〔舞台は、初めてじゃないのに、今回はおかしくない?〕
自分もそう思っていた。
「ニノもそう思っていたんだ……何かあったのかな。『自信がない』って言ってたよ。」
これには、彼も驚いたみたいで
〔え?あの人、自信がないって言ったの?〕
「そうなんだよ。」
〔ふーん。初めて聞いたよ。〕

俺は、簡単に食事も断られたことも気にしていた。
暫く会えないんだろう。
きっと
その先にある
彼に触れることも
出来ないのかも……

役にのめり込む彼のことだ

心のなかに、彼と会えない寂しさが広がっていく。
この、長丁場
耐えられるだろうか………