智くんとのことも、修復できて良かったなぁ……
ちょっとご機嫌なオレ
夜は、5人で仕事なんだけど。
智くんの顔色を伺うこともないね。
だって、抱き合って確かめ合えたから。……なんて、呑気なことを考えていた。

だけど……
その日はちょっと違ったんだ
楽屋には、相葉しかいなくて、スタジオには松本がいると教えられ、二宮のことは知らないと言った。

そんな空気でも、人に合わせるのが得意な嵐、
リハはスムーズに行ったよ
だけど、終わるとみんなはバラバラで口もきいてない。
ニノは前室から、戻る様子もない。
いつも、仲が良いだけにこういうときの空気はすぐわかる。
3人がよそよそしいと思ったのは、オレだけかな?
「ねぇ、松本。オマエたち今日は変だよ。何かあったの?」
思わず近くにいた、松本に聞いてみた。
[気になるなら、本人たちに聞いたら?]って意味深なことを言う。

[あ、翔さん。大野さんのこと、あまり野放しにしない方が良いよ。]

何のことだろう……

いや、言われなくても
わかってるさ
野放しなんかするか。
本当はリードつけて、家に繋いでおきたいくらいなんだから。


〔道を開けて~〕
突然二宮の大きな声がして、俺達の立話を割ってきた。
[大野さんっ!]俺より先に松本が叫んだ。
智くんが、マネージャーと二宮の肩を借りながら、歩かされている
楽屋のソファに横にされた智くん
何があったんだ?
嫌な予感に、ドキドキが止まらない

『ごめん。振りの練習してたら、足首ひねったみたいなんだ。』
スタジオの隅にあった、小さなボールに気がつかず、乗り上げてしまった。という
[冷やさなきゃ。ねぇ、誰か氷貰ってきて!]
心配してきたスタッフに、声をかけている。

『大丈夫だよ。すぐ治るから』
本人はそう言っているけど、みるみる足首と甲が腫れてきた。

真っ赤だ…
「智くん、痛くない?本番できるの?」
『できる。大丈夫』
〔翔さん!楽屋着出して!〕
二宮から言われて、慌ててバッグから俺の前合わせの楽屋着を出した。
 見ると、松本がアイシングの要領で、テキパキと準備をしてる。
相葉はその横で助手のように、ガーゼに軟膏を塗っている。
智くんは、楽屋着など持ち歩かない。それを知っている二宮は、俺のバスローブを智くんに着せていた。

オレも何かしなきゃ……
[いや、先にバケツだな。大野さん、ジーンズ脱いで!]
松本に言われて、腰を上げた智くんの顔が苦痛に歪む。
「無理しないで!」
俺は慌てて、彼のベルトを外してファスナーを下げると、智くんの腰が少し浮いた。
その瞬間に一気にジーンズを下ろす。


この一連の作業がやけに慣れていて、卑猥な妄想になりそうなのに、あれっ?
このパンツ……

二宮が、楽屋着の前を合わせてしまったので、パンツは見えなくなった。彼と一緒に智くんを起こした。
松本は、運ばれてきた氷入りのバケツに、強引に足を入れている。
このテキパキさ。
やっぱり、俺たち嵐はこうじゃないとね♪

《……翔くん…心配じゃないの?》
ふいに、声をかけられた
今日ずっと元気がない相葉だ。
「え?」
《リーダーが怪我したのに、嬉しそうじゃない?ニヤニヤして…腫れた足より本番のことを気にしてるし。》

その言葉に四人が俺を見た
「そんなわけないじゃない?
彼が怪我して嬉しい人なんかいるか。」
《もし、靭帯やられてたら……》
[相葉っ、もうよせっ]
自分の心配を打ち消すように、激しい声で松本が叫んだ。
そのとき
『う~つめたい~‼』
智くんが、バタバダしながら足をバケツから出そうとして〔ダメですよっ!〕二宮と松本に止められている。

『お願い。だって我慢できないんだよぉ。』
泣きそうになって、懇願する智くんに、皆も笑ってようやく楽屋が和んだ。
〔はい、はい。じゃ、足首だけ冷やそうね。〕
《本番前に軟膏の上に冷えピタ追加する?》
[本当に大丈夫かな?本番のカメラ割り、やり直してもらえないかな?]
〔さっちゃん。大丈夫ですよね?〕
『誰がさっちゃんだよっ。馴れ馴れしくするなっ』

さすがリーダーだな……
嵐はもう、纏まっている。
智くんの足は心配だけれど、嵐は彼の怪我の巧妙で、チームワークを取り戻していた。