「智くんさぁ、酸素って飲んだことある?」
いきなり、翔くんが訳がわからない事を聞いてきた。

『24時間ドラマで、酸素吸入機をしたことはあるよ。』
こんな時は、翔くんたらろくでもない企画を考えてるんだ。

「あれは、キツかった。智くんが亡くなるなんて。ドラマとはいえ、いまだに見られないよ。
まぁ、でも経験済みだな。
寒さ対策もしないと。
L'Arc~en~CielのHYDEさんは、
ロンドンブーツで行ったらしいけど、論外だな。」
独り言がスゴい。

『翔くん。何考えているんだよ。L'Arc~en~Cielまで出てきて。
わからないけど、俺なら行かないからな。』

翔くんは
えっ?っていう顔になったけど
「遠慮すんなって。それにまだ誰にも内緒だし。」
こんなときの翔くんのメンタルはめちゃめちゃ強い。
『(俺の話)聞いてるの?』

「釣りで焼けてるんだから、日焼け対策もしないとな。」
『翔くんったら!』
メモ用紙に箇条書きしている手を止めて、翔くんの膝に座った。
「智くん、今日は積極的だね?」
ちょっと嬉しそうに笑った、
いけない!彼の術にはまるところだったよ。
慌てて膝から降りた。

「あら?降りちゃうの?
実はさぁ、山の日の企画をみてね。…」
そう言って携帯の画像を出した。
「これ見てよ。
時々行く、好きなアンティークショップがあってさ、『紅玉』って言うんだけど。その店にに貼ってあったんだ。良いでしょ。」

『わぁ、花火がハートの形になってる!』
「企画が良いよね!
花火も綺麗だしさ。
で、これみて思い付いたんだけど、
どうせなら、1番高い所から叫ばないか?『やまやー!』って。
智の忍術でさぁ、花火もこんなふうなハートの形にしてよ。」

翔くんの話って
『俺たちが富士山に登るってこと?
嘘だろ!
次の日仕事じゃん!』

「大丈夫!仕事だけど、翌日は夜からだし。下山したらタクシー待たしといて、富士吉田駅から、特急に乗るつもりだよ。」
『嫌だよ。そんな体力ないし』
「大丈夫だよ!ほら、高尾山だって登ったし。」
呆れる……
『富士山とは、全然スケールが違うし!それにあれは、登山電車に乗ったんじゃん!
翔くん、バカじゃないの?』

「…………」
ちょっと言い過ぎたかな?
「あ~!もう~!何でも良いよ!
ねっ智くん。いこうよ!行こうよ」
翔くんが駄々をこねだした。
こうなると、面倒くさいんだよ。

急に体が宙に浮いた。
後ろから抱き締める形になって、
持ち上げられてる。
「ねー!智くん!富士山に行こうよ!行こうよぉ!」
クルクル回された
『や、止めてよ!目が回るし、気持ち悪い…』
「じゃあ、行く?」
急に止める
『む、無理』
とたんにまた、回される
「行くって言うまで、止めないから!」ってまるで子供だよ。
すると、
「ヤベッ、俺が気持ち悪くなってきた。」
突然俺を離して、ソフアに横になった。
『もう、バカじゃない?』
「智のせいだぞ!サトシのせいだー!さとしのせいだぁ。」
『翔くん!どうしたんだよ』
翔くん、完璧にオカシクなったな。

こんな可愛くなった時は、もう降参するしかない。
『……わかったよ。行くよ、行きますよ。』
ガバッと起き上がり
「『京の都……』とか言うなよ!」
映画を見てくれた翔くんらしい。
『あ、バレた?』
もう~気持ち悪くなってないじゃんか。
「本当だよね!智くん!じゃ…約束のキス……ね?」
『何でそうなるんだよっ!』
「キスねっ!智くん」
もう~翔くんには、かなわないなぁ。