誰一人笑っていなかった。


また一人づつ述べていった。『先輩にはこれからも色々教えて頂きたいですし、先輩だと思っています。』


意味がわからなかった。



何が知りたいんだろう?



ミホの番になった。『皆より遅れて入部したんですけど、先輩に迷惑をかけない様にがんばります。


それと先輩だと思っています。』皆と変わらない答えだった。



『先輩だと思ってないでしょ!』一人の2年生が言った。



ミホは驚いたように目を丸くしていた。



なんとなく、そうなるだろうと予想はしていたが実際にそうなってしまうと、どうしていいのかわからなかった。


何か出来るわけではないけど、これはイジめてるだけだと思った。




気に食わないから吊るし上げている、そうとしか思えなかった。



『他の1年生は外に出ていて』ミホとその友達アキが残された。



1年生2人 対 2年生15人だ。


倉庫の中で何が行われていたのかは分からなかった。


だた、2年生が怒鳴っている声だけは聞こえた。



誰か先生を呼びに言ったほうがいいんだろうけど、そんなことしたら2年生に目を付けられてしまう。


わたしたちは何も出来なかった。



その時隣のバレー部の女性顧問がいつも開いている倉庫が閉まっているのを開けにきてしまった。


その顧問は少しやんちゃな生徒とも仲良しだったので、皆から人気があった。



顧問が扉の前に来て、ちらりと座って入る私たちを見た。扉を開けた。

いつも通りに練習をして、家に帰った。



次の日、女子バスケ部のイジメ問題が持ち上がっていた。1年生はその噂ばかりしていた。



後日、主犯格の2年生とミホとアキ、先生とで話し合いが行われた。



一見解決したようだったが、ミホとアキは2年生が引退するまで、部活には来なかった。

ダサい制服にくだらない校則。



私の通っていた中学は、未だに男子は坊主・女子はみつ編み。


月曜の朝、校門には生活指導の先生が立って、登校している生徒の制服の乱れがないかをチェックしていた。



私は入学してすぐにバスケ部に入部した。一番の仲良しの友達につられての事だった。



別にバスケが大好きだった訳ではない。



入部してすぐ、一年生はボールにも触れせてもらえなかった。


先輩がプレーしているのを立ったまま見学し、ゴールが決まると声を出すのだ。


楽そうに聞こえるけど、3~4時間同じ姿勢でいることは、かなりの苦痛だった。



今まで小学生で体育の授業と休み時間ぐらいでしか体を動かすことなんてなかった。



筋肉なんてほとんど付いていないのだから、当たり前だ。



家に帰るのは7時過ぎ。肉体的にも疲れていて、入部して3ヶ月間は晩御飯がまともに食べることが出来なかった。



だらだらと3ヶ月が過ぎ、3年生の引退試合になった。



トーナメント戦だったので、弱小の女子バスケ部は一回戦敗退。3年生は泣いていた。


数ヶ月間、顔を合わせただけの先輩、別になんとも思わなかった。


同級生の友達は泣いていたが、なぜ泣いているのか理解できなかった。

3年生が引退したので、1年生もボールにさわり今まで先輩達がしていた練習を出来るようになった。



バスケをするのは初めてではないけど、考えていたよりボールも大きく、ドリブルも上手く出来なかった。


一番は先輩たちの基礎体力にもなかなか着いていけなかったことだ。



練習は流れ作業のように、全員がパスを出し、上手く受け取らないといけなかった。



1年生がボールを受け損なうと何度か、練習が中断した。


誰も何も言わなかったけど、2年生の目が『なにやってんだよ。』といっているのがわかって、とても嫌だった。



この2年生はとても意地悪だった。



同級生ケイコの姉が同じバスケ部の3年生だった。


だから、ケイコと仲が良かった私は被害を受けなかった。


しかし、一人はいるお調子者、、ミホはとてもやさしくて面白い子だった。



声もでかいし、よくしゃべる。精神的に幼かったんだと思うが、先輩がいる前でも言いたいことを言ってしまう子だった。


みんな思っているけど口には出さない事を、空気を読まずに言ってしまうのだから、それを聞いた先輩もいい気分ではない。。



ある日、1年生全員が体育館の倉庫に呼び出された。



カビとほこりの臭いがした。倉庫の扉を閉めると、窓からの光が漏れているだけで薄暗かった。



2年生の先輩が『端から順に一人ずつ、今後の目標を言って欲しい。』と言われ、私たちは素直にそれに従い目標を述べていった。



先輩たちは怒っている様子もなく、いつも通り私たちの述べた目標について、何かしら頷いたりしていた。



一人づつ言い終わって、自分の順番が近づいてくる。心臓の鼓動が強くなるのがわかった。



『まだドリブルも上手くないし、先輩方に迷惑をかけることも多いですが、これからもっと練習してうまくなりたいです。』・・・緊張した。



何も悪いことはしていないのに、私の番になって、何か先輩達が豹変して攻めたりしてこないだろうかと不安だった。



どうやら先輩たちの標的は私ではないらしい。すべての1年生が目標を言い終わった。



先輩はただ、皆が目標をもってバスケをしているのかが知りたかっただけなのか?


全員が言い終ったので、もうこの息苦しい空間から開放されると思った。



『じゃあ次は、私たちのこと先輩だと思っているのか聞かせて。』2年生が冷たく言い放った。



倉庫の中の空気が一気に凍りついた。