なんちゃってとはいえ一応日系アメリカ人の自分としては今回の映画は色々感慨深いものを感じられた作品だったと思う。
今回観てきた映画は「ゴジラxコング 新たなる帝国」
観劇日は4月26日㈮
場所はコロナシネマワールド
人数は金曜の18時だったからか、割と少な目…まあ、土日は盛況ぽかったし、決して人気がなかった訳ではないと思いたい
正直な感想を述べると、ストーリーの面白さと重厚感は前作の「ゴジラ vs コング」の方が面白かったとは思うし、ゴジラ映画としては和製である「ゴジラ-1.0」の方が圧倒的に面白かったが正直その二つと比べるのはアンフェアに思えるぐらい別ジャンルの映画なのではと考える
その理由としてはまず今回の映画の主役はコングであり、ゴジラはどちらかというとゲストに留まっているといえるぐらいコングに比重を置いて描かれているからだ
「-1.0」はいうに及ばず「ゴジラ vs コング」は本当にいい塩梅に出番が折半されていたが今回はコングが如何にして「キングコング」になっていくのかを見届ける…そんな映画だった
タイトルも「コング 新たなる帝国 feat ゴジラ」でも個人的には良いと思うのだけどそこは諸々のリスペクトが働いたのかもしれない
ここまで特に褒めているようには感じられない文章のように読めるかもしれないがそんなことはないことだけ明記する
娯楽映画としては満点だったし、昔懐かしのゴジラにありがちだったそんなバカなwと褒めたくなるようなシーンも豊富なのでとても楽しめた
さて、そんな頭空っぽにしてみた方が楽しめるこの映画だというのに冒頭に書いた感慨深く感じたのはまず今回で苦労人コングが今回で名実ともにキングコングになったことと、ハリウッドが遂に怪獣映画の作り方をマスターしてしまったからだ
思い返せばこのモンスター・ヴァースシリーズにおけるコングの最初の登場は成長期からのスタートだった
それが「ゴジラ vs コング」で身体成長の最盛期を迎え、今作で周辺環境と精神成長のピークを迎えたのを見ると大きくなったなぁ(元々デカいだろうというツッコミはなしで)と思わずにはいられない
いや本当に、元々温厚なのだろうけど見知らぬ、居るかも分からない同族(しかも最初は敵対)に対してあそこまでまざまざと王の器を見せつけてくれるとは思わなかった
前作でゴジラと対等にやりあったことによってあのゴジラから空洞世界の「王」を認めて貰ってたとはいえ治める「民」無しのキングだったので心なしか本人もそう思っているような悩ましげな感じだったし、シリーズ通してみると本当に良かったねと思わずにはいられなかった
物語の都合上、もしくは成り行きとはいえ、今回の敵役であるスカーキングが悪政を敷くタイプかつ地上世界を侵略するという悪役だからこそ倒す必要がありその結果群れを(言い方は悪いが)乗っ取った訳だが、仮にスカーキングが善良だったら彼はどうするつもりだったのだろうね?
社会性の怪獣とはいえ幼いころから独りぼっちの彼にそれを学ぶ時間はあったのかどうか、そもそもスカーキングにαタイタンの器は無さそうだしゴジラから認められている実力者なので禅譲もしくはリーダーの奪い合いにはなりそうな気もするがどうなのだろう?
どちらにせよ次回作には群れでの生活がどのような物になるのか少しでもいいので描いてほしいものである
それと人間に対してやゴジラ相手に対してもその成長具合が伺えた
原作のコングもそうなのだが、割と人間の都合に振り回される側だったはずなのに今回は人間を自分の都合で動かしているのには感心した
心許した相手とはいえ元々の住処から南極に輸送され(しかもおとなしく?船やヘリで輸送される)たり地下世界への水先案内人にさせられた過去から一変、あろうことか虫歯治療や凍傷の治療のために人間を明らかに意図的に利用しているのには笑えたし他の怪獣とは違う所を見せつけてくれたなと思う
こればっかしはゴジラさんにも出来ない芸当なので物凄いアドバンテージだなぁ、それと同時にここまで大事にすることにハリウッドの意地を感じられた
やっぱり自国で生まれたコンテンツを大事にしたい、そんな心意気が何かうれしいよね
もう一つ感慨深く思えたのが、ハリウッドが遂に怪獣娯楽映画の作り方をマスターしてしまったこと
今までも名作「モンスターパニック」系の映画はあったが、「怪獣、KAIJYU」映画は今回で遂に花開いたのではないだろうか?
今までも日本的な怪獣映画を作ろうとハリウッドは努力してきたとは思うが、どれもやはりあと一歩のところでモンスターに戻ってしまうことが多かった
きっかけは何だろうか?
やはりパシフィック・リムの影響は大きく、劇中で 「KAIJYU」という単語を劇中での使ってたのが大きいと思う
残念ながら言葉は浸透しなかったが概念は根付いたしそこから10年かけて怪獣…あちらでは「タイタン」という自国の言葉で表現及び積み重ねてきた経験から新機軸の怪獣映画が出来上がったことは非常に喜ばしい限りである
しかし喜んでばかりいられない
何せ本家本元であるはずの日本は今回の映画で致命的な弱点が露わになってしまったからだ
それは…予算の問題だ
まあ、これはいつものことのように思えるしそれこそ -1.0が高評価された理由の一つに低予算であれほどのクオリティの映像を作ったこともあるのだけどアタシが危惧しているのはそこではない
-1.0とゴジコンは同じゴジラ系統の映画とは思えないほどにふり幅が大きい稀有なコンテンツだと思う
初代ゴジラ、シンゴジラ、-1.0を代表とするシリアスで見ごたえのあるストーリー性重視の作品とゴジラの逆襲、FW、ゴジコンを代表とする怪獣プロレスを重視する作品とだ
どちらが良いかは完全に個人の好みに分かれる話なので優位性は語るつもりはないけど、今回の-1.0とゴジコンの成績、というよりは令和の世に着ぐるみゴジラが復活しない限りは日本でこういった怪獣プロレス系統の映画は恐らく作られないと思うし、というより不可能に近いと思う
ゴジコンで計何体のタイタンが登場したのだろう?雑魚も含め多分数えきれない怪獣をあれだけ出すのはやはり資本力とcgクリエイター人員が豊富なハリウッドならではだし、同じ画面内に四体の怪獣を戦わせるのは割と狂気に近いものがある
あれだけの労力を怪獣一体だけに絞ったらどれほどまでの映像美になるのやら…
恐らく逆立ちしても今の日本に2体以上のcg怪獣をプロレスさせるほどの予算はつかないだろうし、次回の和製映画もゴジラ一体オンリーの映画になりそうな気がしてならないのだ
次回はまだいいかもしれないが、その次、その次の次同じようにゴジラ単体の映画になると客も飽きてきてまたしても長い冬の時代が来やしないかとても心配でならない
折角日本映画界とハリウッドがこれほどまでに分かりやすい類似作品を交互に作り上げている形になっていることはとても良い環境なので是非とも関係者の皆さんには頑張ってほしいし、一ファンとしては様々な形で応援したい