人とは比べようもない巨体が軽やかに飛翔していく。


翼を羽ばたかせ移動していく先に私達も走り寄る。
雨の所為で視界が利かず、足場も悪い。


眼下に広がるのは何処までも続く緑。

ハンターが狩りをする狩猟場に樹海と呼ばれる場所がある。
広大な土地に鬱蒼と広がる木々。
その森の中央には天を突く巨大な、森の「主」が鎮座している。

その巨木の根本にはこれまた巨大な空洞があり、その広さは一つの町にも匹敵する。
如何にこの木が巨大なものか想像がつくというものだ。

樹海頂部。
最近発見されたそれは、その巨木の上にある。

そして其処には今まで「噂」の域を出なかったモンスターが存在していた。

尤も、ギルドでは既にそれを把握し、情報操作をしていたのだろうが。



私達は上空を舞う白い巨体のただならぬ様子に危険を感じて立ち止まる。

エスピナス希少種。
通常種と異なり、全身が白く、随所から生えた棘は黒とも見紛うほど濃い紫。

その異様な姿に戦慄を覚える。


フィールドの中央付近まで移動したエスピナス希少種は、地上に降りず空中で長い首を擡げる。


「ブレス?」
疑惑を抱いたその刹那、私達の視界は薄紫色の何かに包み込まれた。
熱い。
熱で体力が奪われていく。
体が言うことを聞いてくれない。


可燃性の物質を体内で生成し、それを獲物に叩きつけて仕留めるモンスターは数多く存在する。

しかし、辺り一面を火の海に出来る程のものなど聞いたことがなかった。


加えて、この紫炎に混じる障気は…

「毒」

モンスターの分泌する毒は遅効性だが、それは確実に体を蝕み死に至らしめる代物だ。

早く処置しないと生命に関わる。

私達は、身を灼く炎から抜け出し解毒剤を一気に呷った。


紫炎の中に悠然と佇み、此方に痛いほどの殺気を放つ白き竜。


狩られるのはあの白いエスピナスか、それとも私達か。

己を鼓舞し、私は背中の太刀を引き抜いた。