凝った肩をほぐし、大きく伸びをする。
「はぁ…なかなか具合の良い装備無いわねぇ…」

「おぅ、ねぇちゃん珍しいな?」
「あ、親方。」

下手なハンターよりも立派な体躯をした男が声をかけてきた。

この工房の総責任者であり、自らも腕を振るって数々の武具を作り出す一流の職人だ。
皆からは、尊敬と親愛を込めて「親方」と呼ばれている。


「そんなに珍しいかしら?」

「お前さんが工房に来る時は何を作ってどう調整するか、大抵決まってる場合が殆どだからな。」

「まぁ、それはそうだけど…」

「相手に防具をあわせず狩りに出るってぇのは感心しねぇが…」

「しねぇが…?」

「一度作った防具を長く大事に使ってるのは知ってるからな。職人としては嬉しいぜ。」

「それ、褒めてくれてるの? 貶してるの?」

一瞬の間。

親方はニヤリと笑って一言。

「両方だ。」

私はテーブルに突っ伏す。
全く…食えない人だ。


「で…何をそんなに悩んでるんだ?」

向いの椅子に腰を下ろしながら親方が問いかける。


「親方、実は…」

私は先日の出来事と、抱えている有耶無耶としたものを話した。

「ふぅむ…ソイツは難儀だな。」

「狩りの安全性と効率、バランスとるのは難しいわよね。」

「どの程度のレベルで安定を保てるかは腕一つだからな。
しかし、流行りに鈍感なお前さんも遂に、いや…やっと、か?
世相に則した装備を作る気にになったか。」

そう言うと丸太の様な腕を組み、何事か考え始める親方と、一人ごちる私。

「そうなのよね。先に進むには、腕が足りないの承知で綱渡りするしかないのかな?」

「うぅむ…」



数瞬の間を置き、親方は部屋の奥へ行くと一冊の書物を手に戻ってきた。


それを開き、ページをめまくりながらまた考え始める。

今、彼の頭の中では現存の防具の性能、装飾の仕方でフル稼働中している…ハズだ。