飛竜はその巨体故に急には止まれず、突進後は身を投げ出し、大地との摩擦でもって止まる。

立ち上がるまでの僅かな時間隙が出来る。

私は素早く駆け寄ると、背中の大剣を抜き放った。

蛇剣【大蛇】。
飛竜の翼爪の替わりにドスランポスの爪を使用して作られた、ブレイズブレイドの亜流品だ。

抜き放つと、ランポスを模した青い刀身から赤い爪が鋸刃のように姿を現す。
特別な能力はないが切れ味はなかなかのものだ。


鱗を数枚弾き飛ばし、尻尾にその爪が食い込む。

流石に一撃では切り落とせない。
それでも根気強く斬りつけ、先ずは尻尾の切り落しを試みる。

攻撃範囲を狭め、少しでも有利にする為だ。

彼女から少し距離を置いて動き、突進を誘う。
焦ってはいけない。挙動を確かめ、引くも攻めるも自由になる位置で立ち回る。
尾を狙える時はそこに斬りつけ、そうでないときは頭や脚など比較的柔らかい部位に斬撃を叩き込んだ。

幾度となくそれを繰り返し、そのたびに刃が深く食い込んでいく。
全身を覆う甲殻には所々亀裂が走り、鱗は無残に砕け散る。
そして私の渾身の一撃は遂に彼女の尻尾を切り落とした。


体の一部を失った彼女は怒りの咆哮をあげる。

眼は爛々と輝き、口元からは黒煙があがる。
彼女とて生きるために必死なのだ。

大きく息を吸い込み、必殺のブレスを放つ。
濃密な炎の塊。
如何に頑強な防具であろうと、その熱までは防げない。
以前リオレイアの巣で目にした焼け焦げた防具が脳裏に浮かぶ。
あれは、ブレスの直撃を受けたハンターの成れの果てではなかったか。

ああなるのはごめんだ。
硬直する体を無理やり動かし、迫り来る火球を横っ飛びにかわす。

その勢いのまま、無防備になった頭部をめがけ大剣を振り下ろした。

………

一瞬の静寂。

深緑の体を朱色に染め、ゆっくりと崩れ落ちる彼女の姿は凄絶な美しさを持っていた。

横たわる彼女の遺骸に感謝を込めて黙祷を捧げ、素材として使えそうな部分を剥ぎ取る。

そうして私はベースキャンプに引き返した。