薄霧の中を身を低くして走る。

此処は倒木や朽木が多く、足元にも注意を払わねばならないが、他のエリアと違って泥濘が無い分踏ん張りが効く。

ココット村よりほど近い沼地に私はいた。
村にはハンターが私一人しかいない。
従って、私が受ける依頼の殆どは単独での狩りとなる。



いつもは片手剣を愛用しているが、今日命を預ける相棒は大剣だ。

片手剣では、小回りは利くが圧倒的に火力が足りない。


大剣は重量があり、一撃の威力は片手剣のそれを軽く凌ぐ。
それだけに扱いも難しい。崩れた体勢からではその重量が災いして刀身を振ることもかなわず、抜刀したままでは素早く動くこともままならない。
それでも、その重量を生かした一撃は魅力的だった。


この依頼を受け沼地に来るのは、実は今回が初めてではない。
何度か挑み、その都度飛竜達の連携に、そして狩りの制限時間に阻まれていた。

そう、この狩りの標的は「空の王者」の名を冠する雄火竜リオレウスと、「陸の女王」リオレイア。
飛竜種を代表する一対のつがいを討伐することにある。


一撃の威力を少しでも上げ、狩りにかかる時間を短縮する為に大剣を選んだ。
駆け出しのハンターだった頃は大剣に振り回されたが、今はあの頃とは違う。

片手剣を軸に基本を学んだ。
今ならば大剣に振り回されず、大剣を振るえるはずだ。



そんなことを考えながら走っていると、突風と共に視界を遮る白い壁が霧散した。

深緑の翼がゆっくりと舞い降りてくる。どうやらお出ましのようだ。

位置が悪い。既に彼女は私を見つけ、脚が大地につくと同時に咆哮を上げた。

彼女から発せられる怒気に当てられ身が竦む。
ハンターとて所詮は人間。モンスターを狩ることを生業としていても恐怖心はある。
人間よりも生態系の上位に位置する彼らに対して、本能的に恐怖するのは生物として当然の事なのだ。


彼女はその強靭な脚で大地を蹴り突進して来る。

早く…早く動いて!

自分の躰を叱責する。
ハンターの側に一撃必殺の術はないが、対する飛竜にはそれがある。
当たり所が悪ければ死が待っている。

硬直が解け、すんでのところで突進を避ける。