両側の岩壁がせり出し、トンネルの様になった壁際には人の身丈程もある植物が生い茂る。
そのトンネルを抜けた先には小さな池があり、ハンターは其処で釣りに興じ、大型のモンスターは水場として利用する。

此処は密林のほぼ中央、巨大なトンネルのあるエリアの一角。
私達は壁際に群生する植物の影に散開して身を潜めていた。

大型モンスターの姿は見えない。

しかし感覚的に理解るのだ。
今回の狩りのターゲットがこのエリアに居ると。

親方を筆頭に、工房の職人達が丹精込めて鍛えてくれたレイアシリーズ。
雌火竜リオレイアは全身が深緑だが、その素材から作られる防具は白が基調だ。
緑の多い密林では少々目立つが、しゃがんでいると、スカート状のフォールドが広がり一輪の巨大な華に見えない事もない。
私はこの装備の性能的な部分より、華麗なデザインを気に入り愛用している。

またこの装備は感覚が鋭敏になり、ペイントボールを使わなくとも狩猟場にいる大型モンスターの位置を把握出来る能力が備わっている。

どういう原理でそうなるのかは解らないが、私はその能力のお陰で常に標的を見失わずにすむ。
ありがたい話だ。

と、不意に草むらが揺れる。
考えを中断し、意識を集中する。


ブヒ…

「なんだ…モスか。」

密林には茸がよく育つ。それを餌とするモスもまた多く生息している。
如何にモンスターに分類されているとはいえ、此方から手を出さない限り向かってはこない大人しい性格だ。

モスは私のすぐそばで、盛んに鼻をひくつかせている。特産キノコでも生えているのだろうか?
その姿を横目に、一瞬緩んだ気を引き締め、私は再び周囲に視線を巡らせた。


…!!

再び風もないのに草むらが揺れた。

またモスか?
いや違う!
ハンターとしてのカンが最大級の警告を発している。
私は全力でその場から走り出した。

ぴぎぃっ!!


直後、モスが断末魔の悲鳴をあげる。

振り返ると、見えない何かに吹き飛ばされ、ただの肉塊と化したそれが地面に横たわっていた。
危なかった。動くのが一瞬遅かったなら、其処に横たわることになったのは私だったのかもしれない。

「みんな、すぐそばにいるよ!気をつけて!」

私は仲間達に注意を喚起する。

明るい場所に出たからか、よく見れば僅かだが陽炎の様に景色が歪んでいる。

此処は密林。湿度が高いとはいえ景色が歪むほどの熱気がある筈がない。