いよいよ最後の第三幕です。
最初の簡易あらすじで言えば11から最後まで。
トスカと言えば!の名場面の連続で、時間は3つの中で一番短いものの濃密な時間でした。
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舞台の始まりは城の牢からです。
囚われたカヴァラドッシが嘆きのアリアを歌うシーンがあるのですが、これがすごい。
トスカに別れの手紙を書くシーンですね。
トスカの、シーンではなく歌唱の中で一番感動したところは?と聞かれれば間違いなくここを挙げます。
内容は理不尽な仕打ちや人生の儚さ、トスカへの愛など、まあありがちなものを歌っているのですが、カヴァラドッシの悲しげでありつつ伸びる声で、まるで失恋バラードを聞いているような切なさがありますね。
なんというかこれまでのトスカやスカルピアの歌は「優れている」の一言で、とにかく圧倒されるものなんですよね。
実際前の記事でカヴァラドッシのことを声量や技術が少しスカルピアに劣るか、と書いたと思います。
男声女性の違いはありますが、トスカも抜きん出ています。
が、カヴァラドッシのこのアリアは初心者には唯一?「すごい!すごい!」だけではなく、登場人物の心に寄り添えるような歌かな、と思います。
低音から高音まで、こんなに初見の観客の感情に訴える歌はやはりここしかないかと。
実際このアリアが終わるとこれまでで一番大きな拍手と賞賛の声がありました。
常連でも心を揺さぶられるのではないでしょうか。
私は大きな見所の一つだと思います。
さて、カヴァラドッシの独白が終わる頃トスカがスカルピアを殺したその足で会いに来ます。
銃殺刑が見せかけであること、その後通行許可証を使って逃げられることなどをカヴァラドッシに伝えると、彼は「スカルピアが最後にいいことをしてくれた!心を入れ替えた!」的なことを言うのですが、ずっこけますね。
あんた今まで何を見てきたんだああああああ!!!!(心の声)
トスカがここでスカルピア殺害を告白し、カヴァラドッシはそれでもトスカを愛していると熱烈な歌と抱擁を交わします。
あんまりラブラブすると死亡フラグが立ちますよ…。
場面は変わり、いよいよ処刑の場。
10人ほどの兵隊がざっかざっかと歩いてきて、カヴァラドッシに向けて銃を構えます。
もうこの時点で音楽がどんどん悲劇的な方向に盛り上がっていて嫌な予感しかしない。
端っこの壁際で手を組み見守っているトスカ。
剣が振り下ろされると同時にバババーン!!
一瞬だったのでよくわからなかったのですが、銃先がオレンジに光って、フラッシュのように数回瞬きました。
火薬は使っていないと思いますが、電気ではあの表現はできないと思うので、火花かなんか出したのかな?と思います。
それより音がすごい破裂音で恥ずかしながら椅子から数センチは浮きました。
兵隊が去るのを待ち、トスカがカヴァラドッシに駆け寄り「マリオ、もういいわよ」と何度か言いますが、カヴァラドッシは起き上がらない。
数回揺すって体を仰向けにすると血まみれ。
「死んでる!!!」というトスカの声は多分劇中を通じて一番大きいのではないでしょうか。
もう絶望のトスカは止められません。
同時にスカルピアの死体が見つかったのか、手下が数人トスカを捕まえに来ました。
処刑場の塀際に追い詰められるトスカ。
はっきりとした描写はないですが、おそらく3階くらいじゃないかと。
「あの方の命は高いぞ!」というような呼びかけを受けたトスカは「自分で償うわ!」と叫んで背中から城壁の向こうに落ちていきます。
余韻や後日談等はなしでここでぷっつりと幕が下りて終わり。
こういう盛り上がって盛り上がってバチンと切る手法は結構好きです。
トスカが背中から落ちていくシーンは「本物を観られた!」という興奮と感動でいっぱいでした。
迫力がすごい。トスカ役の人のファンになりそう。
この後は拍手が鳴り止みませんでした。
演者たちが出てきてお辞儀したり拍手したりというのがあったにせよ、ゆうに20分は拍手していたと思います。
感動したので拍手したい気持ちはやまやまだったのですがだんだん手が痛くなってきて…。
とはいえ本当に素晴らしい舞台でした。
スタンディングオベーションしてた人もたくさんいたしね。
まだ足元がふわふわ頭がぐわんぐわんした状態でオペラパレスを出て、気づいたら家に戻っていました。
感想とか感動とかを噛み砕くのに数時間はかかったなあ。
トスカをもう一回観たい気持ちもあるけど、機会があったら別の舞台も観てみたい。
なにぶん初めての経験で「すごい」だの「感動」だの貧しい語彙でしかレポートできませんでしたが、ぜひお金に余裕が出たらオペラ鑑賞を趣味にしたいものだと思いました。
舞台の感想は以上です。
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以下蛇足。
オペラ編の最初の記事で「動物のお医者さん」という漫画を紹介したかと思います。
この漫画自体大好きなのですが特にトスカの回は中でもお気に入りと言えます。
あらすじとしては漫画の主人公ハムテルの母親(絹代・オペラ歌手)が北海道の舞台でトスカを演じるのですが、舞台側の予算が足りないために色々と問題が起こって、微妙に違うトスカになってしまうというお話です。
ちょっとだけ紹介。
小道具のミスでナイフが机にないことに気づき、焦った絹代がスカルピアを絞殺。
一つ考えることがあるとすれば、漫画版と今回観たトスカでは訳者が違うのか翻訳が微妙に違うところが多々あったんです(意味は同じ、言葉の違い程度)。
最後のシーンでスカルピアの命は高いぞ!と言われたトスカが今回の舞台では「自分で償うわ!」と言いました。
漫画ではこれが「私の命で!」となっていて、このセリフに関して言えば私は漫画版の方が好きかな、と。
簡潔だし、悲劇の終わりとしてインパクトのあるセリフだと思う。
佐々木倫子様(崇拝してます)の観たトスカではきっとこのセリフだったんだろうな。
トスカの回はいわゆるスピンオフ的な感じで本筋とは全然違うのですが、漫画自体面白いのでシュールで淡々とした人間ドラマ的な漫画が好きな人にはオススメです。
ギャグ漫画とは言いたくないけど、ギャグ漫画でも通じるほど面白い。
動物好きには特にオススメ。
私がハスキーおよびアラスカンマラミュートを好きになったきっかけとも言える漫画ですね。
あーーー飼いたい!

