目覚ましい発展により世界に追いつき

アジアを牽引する上海の最先端技術に感嘆しつつも

そこに同時に残る古い建物にため息をつく
そのギャップが同時に存在することが今も昔も上海の面白さと思っている。
 
十数年前の留学時代も環球中心ができたり、リニアが通ったり
交通カードの便利さを実感したりしていたけれど
それと同時に古い町並みの取り壊しも憂えていた。
 
 
あれから十数年、今の上海は物価も高騰し
お金持ちが以前よりずっと増えて、一定の所得がある人は気軽に海外旅行へ
スマホも国産のもののクオリティが高く、電子決済も普及している。
街の開発も進んで、古い建物が壊されて超高層ビルが林立。
大都市上海は今も進化を続けている。
 
古い建物の損失は嘆かれるけれども、かと言って狭くて100年物の物件は
住み心地も住環境も劣悪だ。
 
開発のための取り壊しが決まり
立ち退きに同意すれば政府や開発業者からかなりのお金か新しい住居をもらえる。
それで生活が向上する人たちは喜ぶし、
長く暮らした場所を離れたい人はお金や不動産では心を動かさない。
 
 
今回訪れたのは、上海の老西門内にある孔家弄という場所。
ピンクのあたりを歩いた。

 
 
 
ここに住む人の7割の苗字が孔だったことからつけられた孔家弄という名前。
昔からの上海の住宅街だ。
 
ここには一緒に行っていないけれど、5歳の娘が最近
「まま、中国の家はなんでボロいの?私たちが住んでいるみたいに綺麗な家もあるのに」
と言っていた。確かにボロい家というカテゴリに入るけれど、
でもそうじゃなく、100年もずっと使っているから休みもないからボロボロになってしまう。
それでも修理しながらずっと使ってきている場所。
 
「中国人はなんでもなおしながら、本当にダメになるまで使うよね」
と自分のおじいちゃんを思い出して納得していた。
本当は中国人じゃなくてもそうやって古いものをたくさん大事にしている人はいるけれど
それは話が広がりすぎるので、まあ徐々に。
 
 
薄く消えかかった赤い星。
革命や建国の頃の名残か。
 
 
 
少し奥まったところへも入ってみた。
まだ住んでいる人がいるけれど、かなりの人はもう立ち退いている。
今まで何となく人が暮らすところにズカズカ入っていく不躾さに
遠慮していたけど
年内に全て取り壊しと聞いては居ても立っても居られない。
 
 
壁の落書きと門扉の向こうの雑然とした感じ、低い電線。
 
 
奥の方までずんずん行くと行き止まり。
すでに人も引っ越してものが運び出されている?
場所によっては倒壊しそうな箇所もあり危なそうだった。
 
 

 こういう曲がり角、実家の近くの古い住宅街にあったけれど
上海ではなかなかお目にかかれない。
なんだか懐かしい気持ちになる場所だった。
道が狭く、両方に家が迫ってくるけど家も背が低い。
 窓がコンクリートで埋められている家は
既にに立ち退いている家。
 
 
 
 
 

 この家は立ち退きを拒否していて、その意思表示か。
 
 
窓はコンクリートで埋められて人は住んでいないはずなのに
植物だけは元気に綺麗な緑で伸びている。
 
 
 
 
じっと目を凝らすと門の上に
「毛主席万歳」の文字。
立派な門構えだしお金持ちや名士の家かも...
大きな家こそ狙われただろう文革の時期に
毛主席万歳とかくのも頷ける。
30〜40年前に書かれたものと察する。
 
 
 
これを見つけて1人興奮してたら、1人でいる男の人に話しかけられた。
 
その人もふらりと見学していたみたい。よそ者同士はよくわかる。
 
100メートルくらい一緒に話しながら歩いてそれぞれ別の道へ行った。
 
 
 
 まだ住ん出いる人がいるので、水も通っている。
 
 
 
取り壊されてしまうのが勿体無いほど綺麗に残っている彫刻。
どこかに象の彫刻もあるらしいけれど見つけられなかった。
電線が門より下に複数通っている。
 
 
 
少し外れて、木橋街というところへ入り込んだ。
この日は秋晴れの気持ちのいい日で、風も心地よく、木漏れ日が綺麗。
 
 
 
 

2歳半の娘も心地よくお昼寝。
 
そこへ…
木橋街で写真を撮っていたらおばさんがきて寝ている娘を指差し、
 
 
「寝てたら寒い寒い!」
「服ないのか?」
「ない?」
「なんかないのか?」
 
と一気にまくし立てて、私のカバンごそごそと勝手に探る。
そして見つけたショッピングバッグ
 
 
「これでいい、これでお腹だけでも覆おう!」
という経緯でこの図に。
 
本日の上海はとても暖かい。というかまだ30度くらいはあるのだ。
だから油断して上着も持っていないし、放ったらかしだったわけだけど。
 
でも確かに里弄の中は空が狭く日が当たらない。石で建てられた家は涼しい。
そして夏でも涼しい風が吹き抜ける。
確かに寝ていたら少し寒いかもしれない。
 
 
昔はこういう時、お節介で失礼な人と思っていたけれど、
最近はお節介も子供を心配するあまりの発言と思って受け入れられる。
きっと私も歳をとったから。
 
見知らぬ親切なおばさんに、「ありがとう」と言ったら
 
 
「子供はみんなの宝物だからね」
「2歳くらいでしょう?」と笑って家に入っていった。
 
 
 
本当は、ここ取り壊しでしょ?どんな気持ちで?どのくらい残ってるの?
と聞きたいことは山ほどあったけど
今の雰囲気が平和で穏やかだったのでやめた。
 
 
上海名物愛あるお節介おばさんは今も健在で嬉しい。
でもこの小道を抜けて大通りに出た途端、
容赦ない直射日光がすごく暑くて
ショッピングバッグで代用したお昼寝ケープはすぐに取っ払ってしまった。
 
 
なんだか不思議世界に迷い込んだような時間だった。
もっともっとなくなる前に色々みてみたい。
もっともっと上海を歩きたい、と思えた一日。