昭和30年代、兵庫県生まれの私は、親や周りのみんなが阪神ファンの中で育ちました。
熱狂的な野球ファンではないのですが、
今だに阪神タイガースを応援しています。

大谷翔平選手の大リーグでの驚くべき活躍も、興奮とともに観ています。
(大谷選手、かっこいいです!)

先日、新聞の書評欄に「後藤正治」というノンフィクション作家の記事が有り、
ちょっと興味が湧いてきまして、なにか一冊読んでみようと。

やっぱりこれかな、と選んだのが「牙―江夏豊とその時代 (講談社文庫)」でした。
2002年ころの出版ですから、ずいぶん古い本ですが。
感想は・・・、

面白かったです。

ただ、この面白さは、1960~70年代の、
ジャイアンツ V9時代や、巨人にライバル心むき出しで戦った、
個性豊かな阪神タイガースの選手たちの、戦いの記憶をお持ちの方でないと、
ちょっと、わかりにくいかもしれません。

プロ野球が、国民の娯楽の王者であった時代、
その真っ只中に、彗星の如く現れた、江夏豊。
王者ジャイアンツに対して、常に真っ向勝負を貫いた江夏。
村山実の宿敵が長嶋茂雄なら、江夏豊の宿敵は王貞治です。
戦いの場面の心理描写や、心の葛藤がうまく書かれていると思います。

江夏豊が主役ではありますが、
周りの選手との関係もとても丁寧に描かれています。
余計な装飾は排除して、インタビュー中心の構成も好感が持てました。

阪神では、江夏、その兄貴格の村山実、ホームランバッター田淵、
牛若丸の異名を持った吉田義男、
脇を固める、藤田平、遠井吾郎、etc

対戦する巨人や他球団の選手達。
まずは、王貞治、長嶋茂雄。
腋を固める柴田、高田、土井、黒江、末次、国松、森など
双方が心の中でライバルと認め合う、堀内恒夫。

それぞれの選手が、生き生きと描かれています。


当時、テレビ画面に釘付けになった野球ファン、野球少年は、
「こんなシーン有ったなあ」「あのゲームは、こんな心理戦が繰り広げられていたのか」
と、感心する場面が多々あります。

食べるため、家族を養うために、必死で野球をする、
そんな時代の選手たちの生き様や、野球への執念が感じられました。

 

 

メイカーズブックス-店主