会社を畳む Part2から続く

 

夫が亡くなったとき、仕掛かっていた現場は6つ。

内容は下記の通りだ。

 

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    1.店舗の雨漏り工事      

    2.マンションリフォーム

    3.外壁の塗り替え工事

    4.飲食店の開業工事

    5.住宅リフォーム

    6.屋根の葺き替え工事  

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Part1では1~3までの話をした。

残りの現場は3つ。この3つは工事途中だったため、

途中でやめるわけにはいかなかった。

 

 

4の飲食店の開業工事は、夫が最も楽しみにしていて

力を入れていた現場の一つだったと思う。

 

なぜなら、彼は「いつか店舗デザインをやってみたい」と

良く話していたし

飲食店経営にも興味を持っていたから。

 

葬式後1週間後くらいだったと思うのだが、

設計士の方が

事務所に必要な図面などを取りに来られた。

 

夫から、ここの現場の話は少し聞いていたのだが

どの程度まで工事が進んでいるのかまでは

よく分かっていなかった。

 

葬儀の時に、一人の大工さんが

「皆でなんとか現場を納めようと話しあっている」

とおっしゃっていた。

 

設計士さんも大工さんと同じことを言われたが、

「夫の役割は誰もしたがらない」

「自分も設計の仕事が幾つか入っているから忙しい」

という趣旨の話をされた。

 

夫の施工管理の仕事は、とても責任が重くて

ストレスも多い職業だ。

 

もともとやっていた現場監督の仕事も同じく大変な仕事で

「自殺者が多い職業」だと新聞で読んだことがあった。

 

だから、誰もしたがらないのは本当の事だろうと思ったが

実は、この時、頭の中に一つの考えが浮かんでいた。

 

夫が新卒で入社した時、一番最初に仕事を教えてくれた上司の方が

2,3年前に定年退職したと年賀状に書いてあったのだ。

 

その方は、とても仕事に厳しい方で公私ともに鍛えて頂いた。

夫は「その方が厳しく育ててくれたから今の自分がある」と

いつも感謝していた。

 

その方に、お願いできないだろうか?

 

しかし、実際その時の私は頭が混乱していて

「すみません」とただ謝る事しか出来なくて

結局、すべてをお願いする形になってしまった。

 

その後の事は誰からも話を聞くことが出来なかったので

どうなったのかは分からないのだが

きっと、沢山の方に迷惑をかけただろうと

 

しばらく、何も出来なかった自分を責めながら

本当に皆さんに申し訳ないという気持ちで

過ごした。

 

もう少し、自分に教養があったのなら

もう少し、自分に自信があったのなら

もう少し、自分に勇気があったのなら

もう少し、夫の仕事に携わっていたのなら

 

今、思い出しても涙が出てくる。

 

 

 

会社を畳む Part4へ続く → → →