書籍「ジョニー・アイブ」から読むAppleのデザイン戦略 | 是徒然也

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ジョナサン・アイブ率いるIDgこそAppleのクリエイティブ・エンジン


本投稿の目次


Appleのテクノロジー史を飾るデザイナーたち

創業期からジョン・スカリーCEO時代以降に、
主に製品のデザインと開発に関わった人物たちの中で、
この「ジョナサン・アイブ」に登場するキャストは以下のとおり。

Appleのデザイン作業環境

ジョナサン・アイブIDgのデザイン作業は、
スケッチ→模型→製造の一方向へ進むものではない。(ストリンガー氏は語る)
ボタンのデザインに50種類の模型を作成し、
細いエッジの仕様を見て、突き出し、柄、形、素材、
サイズのディテールを熟考する。
ディテール作りは継続的なデザイン工程の一部で、
すぐに模型を作ったり、
エンジニアリングやオペレーションと協力したりすることもある。

PowerBookのステンレス製電源ボタンはサプライヤーに、
12個の微妙に異なるサンプルを作らせていた。
Infinite Loop 2というビルに移転後、
大型の工作機械とプロトタイプ制作装置が設置された。

ジョニーのオフィスにある大のお気に入りの椅子は、
イギリス家具メーカー、ヒル製のスポルトで、
フレッド・スコットが1979年にデザインしたもので、
革とアルミニウム製である。

ジョニーの部屋の外に4つの展示用テーブルがあり、
MacBook、iPad、iPhoneといった製品ごとにセグメント分けされていて、
試作品には黒い布がかかっている。
スケッチブックはイギリスのデーラー・ラウニ社製のカシェットが人気。

以下にデザイン工程で主に使用されるソフトウェアと機材を記す。

  1. エイリアス・ウェーブフロント (現 オートデスク・エイリアス)
  2. ユニグラフィックス
  3. 1と2のデザインファイル互換システム
  4. CNC切削機
  5. CNC研磨機
  6. マット表面加工機
  7. 4~6のロボット制御技術

iMacデザインの着想

キャンディー販売機(ストリンガー)+卵型(サツガー)+プラスチック(ジョナサン)+半透明(メンバーの誰か)
スティーブ・ジョブズはボンダイブルーを気に入り、筐体にハンドルを付けることに同意した。


iMacの技術革新

レガシーフリー(USBのみサポート)
製造技術(工作機械、射出成型の規格)の革新
LGの専用工場(筐体全般)とシンガポール工場(マザーボード)
デザインサンプル→CADと金型で調整→ジョニー達がサンドペーパーでバリ取り


iMacを起点にした製品開発戦略

革命的製品開発→新バージョンの展開とアップグレード(間髪入れず)
iMacは5年で10色を32モデル作り続けた。
ANPP(Apple New Products Process)の立ち上げ。
→企画~アフターサービスまで詳細に手続きが書かれた膨大な規約。
 サプライチェーンから店舗、下請け含め数百社。塗装からネジ、半導体に至るまで。
 →組織的な記録作りが際立った特徴(サリー・グリスデール)
  →コンカレント・エンジニアリングと4分野の製品群への集中。


iBookの技術革新

iMacのlaptopをブレインストーミングでアイデア出し。
「フォーカスグループはやらない。明日の可能性に触れる機会のない人たちに、
未来のデザインについて聞くこと自体が的外れだよ」 by ジョナサン・アイブ

ハンドルはマグネシウムの芯にサーリン(ゴルフボールに使われる耐衝撃素材)
ラッチレスで完全に閉まるクラムシェル型。
弾力素材、ポータブル、ラッチレスが際立った特徴。

FireWireの初搭載でWiFiを内臓(してネットワークカードとベースステーションと接続)する
ホームネットワークにイノベーションを起こした。
デュアルUSB「アイス」はマグネシウムフレームにポリカーボネートを組み合わせ、
HDDを含む重要部品周りは自動車エンジンのようにラバー素材の緩衝材で耐衝撃性能を与えた。

損傷しやすいボタンやラッチは廃止、表面素材によって密閉され、
スリープ状態は表示が内側から外へ透けて見える工夫がされた

家庭用は多色プラスチックからモノトーンのポリカーボネートへ、
プロ用はアルミニウムを使用するデザインへ、それぞれ転換した時期を迎えた。


Titanium PowerBookの技術革新

サンフランシスコの倉庫に特別スタジオを準備して、
数万ドル相当のコンピュータを設置。

筐体は整形チタニウムで仕切りにプラスチックを使用し、
複雑な内部枠組みと強化プレートで強度を出していた。

チタニウムは加工前は美しいが指紋や傷が付きやすく、
塗装も剥げやすい。

蓋を閉めるとき内側からラッチで受け止める仕掛けが特徴。
蓋が閉まりかける寸前に、魔法のようにラッチが飛び出す。
ボディ下方の小さな磁石が、蓋側の細い隙間からラッチを引き寄せる。

高級なステンレススチールのボタンを押すと蓋が少し浮き上がり、
その下に指を差し込んで開く。

磁石を応用する製品はここから始まった。
iPadはマグネットのスマートカバーの開閉で起動とスリープを行き来した。


PowerMac CUBEの技術革新

下部だけが透ける8インチの立方体で浮き上がって見える外観を備え、
冷却ファンがなく、下部の通気孔から内部へ空気を流して、
天板の排気口から排出する静かな空冷機構を実現していた。

電源入切はタッチセンサで行い、透明ケースの表面に印刷された。
→静電式タッチスクリーン技術の利用の先駆け。

標準的な金型を使った射出成型ではなく、
プラスチック素材の機械加工に踏み込み、
ネジ穴や通気孔は精密機械で加工するという、
精密加工技術を確立する。
後々のアルミニウム一枚板からiPadなどの製品開発に貢献し、
大量生産手法の根本的な転換点を迎えた。


iPodの技術革新

東芝が自身で開発した直径1.8インチのHDD
(5G、1000曲分)の使い途をルビンシュタインへ相談したことで、
クリスマスまでに生産することを条件にiPodへ採用。

社外のデザイン会社にいたトニー・ファデルが、
携帯電話の部品を利用した模型を作成してジョブズへプレゼンし、
フィル・シラーが市場調査で得たスクロールホイールを組み合わせるよう、
ジョブズからファデルへ打診。

スクリーンはソニー、ステレオD/Aはウルフソン・マイクロエレクトロニクス、
FireWireはテキサス・インスツルメンツ、フラッシュメモリはシャープ、
電源管理と充電チップはリニア・テクノロジー、
MP3デコーダとコントローラチップはポータルプレイヤーからそれぞれ調達。

ティム・ワスコとジェフ・ロビンがiTunesのUserInterfaceを設計。
バッテリー交換要否の独自調査で不要と判断した結果、
筐体を2枚のパーツ(ステンレススチールとアクリル正面部)で構成できると分かり、
パーツが少ないことが製造精度の誤差を減らし、内部ラッチで自然に繋がる、
繋ぎ目のない精緻なデザインが実現した。

ジョナサンは最初か白とステンレスによる究極のシンプルさ(色だけでなく)で、
中立的で断然ニュートラルなものを目指した。

ヘッドホンのカラーも純粋な白ではなく、
ムーングレーとシーシェルグレー(とサツガー氏が語る)で塗装された。
純粋な白での塗装をジョブズが拒絶していたため。

筐体の白いプラスチックの表面にはパースペックス(アクリル樹脂)が重ねられ、
透明の層を作り上げ、後光が差すように見える効果を生んだ(とジョニー氏は語る)。

パッケージは運送会社ではなく顧客を向いてデザインされた。
コンテナ運送用とリテール用でそれぞれ個別にデザインされた。

最初にiPodはジャーナリストに「Idiots Price Our Devices」と揶揄された。


ルクソランプ型iMac G4の革新

人間に似せた形の首長デザインをジョブズが親しみやすさを理由に選ぶ。

スクリーンの背面にクランプを付け、
バネ入りケーブルに関節をまとめる方式を開発。

クランプを締めるとケーブルが張り関節が固定され、
クランプを緩めるとケーブルも緩み関節が動く。
しかしIDEOにより2本の電気スタンド用のアームで固定する方式を提案され、
その後にジョブズとサツガーに1本で十分で見栄えも良いとダメ押しされた。

ステンレスアームは内部の高圧バネのお蔭でスクリーンの重みを完璧に調整でき、
1本の指でスクリーンを調整できた。

スクリーンのベゼルも調整時に押すことで液晶画面が滲むことを避ける為、
iPodで採用したパースペックスによる強度アップと後光効果を与えて解決した。


iPod miniの技術革新

スクロールホイールは4つボタンを内蔵したものが考案される。
(ジョブズは初代で思いつかなかったことに後悔した)

ジョニーのクルマ好きが奏功し、
Aston Martin DB9のアルミニウムボディにヒントを得て、
iPod miniのアルミニウムボディを考案する。


Mac miniの技術革新

筐体をアルミニウムシートを正方形に押し出し、
表面に強度と仕上げの処理を施した後に、
それを陽極酸化加工する。
これがキッカケでメタルシートの製造を、
フォックスコムなどのサプライヤーに誘いかけて実現した。


PowerMac G5の技術革新

プラスチックからアルミニウムの筐体へ移行を模索したが、
押し出しではなくロールフォーミングで筐体をC型に成形した。
(開いている側にはドアが付く)

マザーボードを含む内部部品までデザインしたのはこの機種が初めてだった。
冷却ファン容器やプレナムも作った。

内部へアクセスするドアのラッチは、
内部についた上下一対の細長いデッドボルトに連結するラッチをデザインした。
内側のラッチが起動すると、蓋を留めている上下のデッドボルトがスライドする。
(自動車のボンネットラッチから着想)


iPhoneの技術革新

ダンカンが持ち込んだマルチタッチディスプレイが発端で最初はタブレットだったが、
iOS担当のスコットがちょっとしたスクロール式の電話帳を作り、
これがiPhoneを開発する突破口となった。

最初はiPodベースとマルチタッチベースの2つのプロジェクトでコンペし、
利便性の理由(小さな画面とクリックホイール)からマルチタッチの採用が決まる。

ジョニーは「魔法のような」「驚きのある」セレブな、
インフィニティプールを思わせるディスプレイを作ろうとした。

ストリンガーのエクストルードデザインのメタルが主張し過ぎるとジョブズが指摘し、
リチャードのサンドイッチデザインを採用するも大きさと厚みの削減に苦しむ。
最後はどちらも破棄され、過去に破棄されたデザインの中に、
全面スクリーンでホームボタンだけがついたものを見つけ採用する。

iPhone4ではついにサンドイッチデザイン(2枚ガラスで挟み、
周囲をメタルでぐるりと巻き覆う)を実現する。
マルチタッチ方式に抵抗膜方式ではなく、
スクロールホイールやトラックパッドなどに使ってきた静電気容量方式を採用、
台湾で斬新かつ応用範囲の広い技術でPOSディスプレイを開発していたメーカーTPKから調達。

プロトタイプ時のディスプレイはプラスチック製だったものを、
ガラスメーカーのコーニング社が開発していたゴリラガラス
(高熱で溶解されたカリウム塩にガラスを浸し、
小さなナトリウムイオンが消えて溶解内の大きなカリウムイオンに置き換わり、
冷却後に大きなカリウムイオンが圧縮されることで、
1インチ10万ポンドの圧力に耐える強化ガラス)へ置き換えた。


iPadの技術革新

iPhone3Gと同じ背面素材(ポリカーボネートとABS樹脂を混ぜた
強化プラスチック)の採用を目指したが、
射出成形時の縮みと歪みがiPhoneよりはるかに大きく製造が難しいため、
アルミニウムでの成形に戻り、補強のためプラスチックより厚みがあり、
丸みもジョニーが望んだほどには付かずかさばったが、
潔いミニマリズムデザインとして完成した。


ユニボディの技術革新

従来の複数の薄いメタルシートを重ねる手法とは真逆の、
厚みのある一枚のアルミニウム板から削り出して筐体を成形する。
アルミニウムはリサイクル効率が高く、
不純物を取り除いた余りの材料を再利用している。

ロボット制御により、1キロを超える高純度の硬質アルミニウム板から、
たった100グラムちょっとの精緻なフレームが生み出される。

ユニボディを支えるのは部品点数の削減努力による、
接合点数の少なさ。初代iPhoneでは30箇所あった接合点が、
ユニボディのものではたった5箇所まで減っている。

2005年のiPhone開発時から時計メーカーを研究し、
非常に高度な製造水準、精密な機械加工部品の使用が重要な発見。
(金属の加工、仕上げ、組立ての研究)

ユニボディはアルミブロックをCNCマシンのレーザードリルで切り出し、
作業の目印が付けられ、不要な部分の大半がここで大まかに切削される。

次に最終形に向けてキートップと入力ポート部分の切り出し、
ネジ穴の穿孔、内部ストラットとリブの成形を行い、
その後にレーザードリルでインジケーターライト用の穴を開ける。

極度に小さな穴のため、表面からは気が付かず、
光を当てると浮かび上がるほどの精度で開けられる。

またスピーカーグリルや他の小さな穴もレーザードリルで開けられ、
シリアル番号にその他情報のエッチングからiPodの背面の刻印までも行う。

CNCマシンのプログラミング変更で設定を幾らでも変えられる。
切削の後で筐体をCNC研磨機に送って表面を整形して均一化し、
表面にセラミック、シリカ、ガラス、またはメタルなどの乾いた粒子を、
高圧で筐体表面に吹き付け、マットな質感を出す。
その後に仕様によって、陽極酸化、クリアコート、鏡面などで仕上げを施す。


Appleの体質と組織構造

鉄のカーテンと呼ばれるほどの、IDgに対するセキュリティ体制。

研究部門はなく、いくつかの部門内でそれぞれ研究開発が行われる
16人のデザイナーによる製品・製造工程の改善(Samsungは1000人規模)

AppleのIDデザイナーは「存在しないものを想像し、それに命を与えること」で、
それは製品に触れて感じる経験を想像すること(とクリストファー・ストリンガー氏が語る)

デザイナーの多くは数十年間共に働き、強い絆で結ばれる。
製品デザインは独りで行うことはなく、製品ごとにリードデザイナーがつき、
一人か二人がサポートに回る。

デザイン工程が守られるように毎週ミーティングが行われ、
週に2、3回はチーム全員でキッチンテーブルを囲み、
ブレインストーミングを行う(参加義務があり、3時間ほどで開催) 。
ジョニーはすべてのセッションに参加した。
みなでスケッチし持ち寄って発想は徹底的に叩かれ、
吟味されて初めて模型が作られる。

ブレインストーミング後に全員のスケッチがリードデザイナーに渡される。
プロトタイプは社外のファンシーモデルズに依頼し、
自社のCNCでは初期模型やプラスチックの型、
小さなアルミ部品などに使われる。

iPodでは筐体内部の溶接線も含めて一台ずつ手磨きされたことからも、
材料への要求が高く完成度へのこだわりが強い。

ジョブズがiPodをプレゼンする際に「Appleの最先端技術、伝統の使いやすさ、
見事なデザインがひとつになっている」と語る。

 
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ジョナサン・アイブ

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