装丁が妙に気になって手にとった。
工学博士である著者の自伝的小説。
彼の学生生活と研究室の恩師である喜嶋先生との交流を描いた1冊。
「静かな世界」とタイトルにあるように、
この本を読んでいると不思議と周りに静寂を感じた。
震災や身の回りのことで気持ちが不安定になっている時、
この本を読んでいる時だけはなぜか気持ちが落ち着いた。
自伝的小説、と言われているけれど
この小説はどのジャンルに分類すればいいんだろう?
自伝ではないような気もするし、小説とも思えないし。
淡々と進んでいくのに、読む手が止まらないし、
心地よい不思議さが最後までつきまとった。
主人公や喜嶋先生の研究に対するひたむきさに、
学生時代、なんでもっと勉強ができることの素晴らしさに
気付かなかったのだろうと思ったり。
でもこの本は勉強が素晴らしい!ってことを言いたいのではなく、
「静かな世界」で生きることの素晴らしさと難しさを語ってる。
「静かな生活」とは喜嶋先生が研究者としてひたむきに研究を続ける姿。
素晴らしいがゆえに、難しい。
ラストが予想外に切なくて悲しかったけれど、信じたい気持ちでいっぱいになった。
生きてるとどうしても日常に刺激を求めてしまうけれど、
何かつきつめたいこと、やり遂げたいことを見つけると、
生活はシンプルになり、そのシンプルを愛するようになるのかもしれないな。