人間グーグルたまりdiary

山本文緒さんの本は短編集を読むことが多くて、実は長編は初めてした。
いやいや~恐れ入りました。「恋愛中毒」とは深いタイトルをつけたものです。

他人との関わりをできるだけ避け、心を閉ざして生きてきた水無月。
結婚してやっとささやかな幸せを手に入れたものの、離婚を余儀なくされ
この先の人生は他人を愛しすぎないようにと、祈るように生きてる。

水無月が働いている弁当屋に突然現れる、小説家の創路。
妻がありながら何人もの愛人を抱え、自分の欲望のまま生きてる男。
水無月の心に創路が入りこんでくる様子は怒濤のようで、
こういう時の女性の「抗えない感」みたいなものが細かく表現されてます。

途中まではこの2人の恋の行方に、ハッピーエンドもしくは
泥沼の破滅的なラスト以外のどんな落としどころがあるんだろう…
って思いながら読んでいたのですが、
読めば読むほど、水無月が「恋愛中毒」になった背景がどんどん明らかになり、
少し予想外なラストへと進んでいきます。

創路の「過去に“もしも”を持ち込むな」というひと言が印象的。
過去に生きる水無月と、現在を生きる創路、真逆の2人。
奔放に好き勝手生きることも、それはそれで難しいと思うんだけど、
“もしも”を持ち込まない潔さがあるからこそ、
創路は自分に正直に生きられるんだろうなと思った。

山本作品ならではの繊細な心のひだが描かれていることはもちろん、
決して甘くはなく、恋愛小説としてはかなり読み応えのある1冊です。