世界陸上北京大会のマラソン代表に選ばれ意気込む今井正人(左)と前田彩里
日本陸連は11日、都内で8月の北京世界陸上マラソン代表6人を発表。2月の東京マラソンで日本人1位となり、初代表を決めた“元祖・山の神”今井正人(30)=トヨタ自動車九州=は、東日本大震災で被災した出身地の福島・南相馬市を勇気づける走りを誓った。女子は昨年11月の横浜国際で優勝した田中智美(26)=第一生命=の落選をめぐり、ロス五輪マラソン代表で解説者の増田明美さん(51)が異を唱える場面もあった。
あの日からちょうど4年。今井は、万感の思いで言葉を紡いだ。「ずっと意識していた。大きな、大切な、特別な日。そういう日に発表があって、代表内定を頂いた。何か、使命があると感じている」。大学時代に“元祖・山の神”として箱根を沸かせ、満を持して世界へ挑むエース。込められていたのは国を背負う覚悟と、被災地となった故郷への思いだった。
決して消えない記憶だ。11年3月11日、両親が暮らしていた福島・南相馬市の実家を、津波が容赦なく襲った。海岸からは約2キロの立地。濁流は1階部分をのみこみ、順大時代に獲得したトロフィーや賞状など、今井の思い出も流し去った。実家は福島第1原発から20キロ圏内。両親は現在も茨城県内で避難生活を送る。自身が実家を訪れたのは、昨年8月が最後。「家は更地になって、(区画を示す)ナンバーカードが立っていた。姉の車だけは、近くに転がっていたりして。寂しいですね…。両親もだけど、故郷に居られない人のつらさは計り知れない」と思いやった。
30歳で遅咲きの初代表。被災地を勇気づけたいと願いながら、結果が出ず苦しんでいた。逆に故郷から背中を押されっぱなしだった。「結果が出ない時も同じように応援してくれたのが大きかった」。代表入りを引き寄せた東京マラソンでは、地元の応援団体からの千羽鶴に力をもらった。「こういう立場の自分しか、できないこともある。やっと、苦しい思いをしている人の背中を押せるようになった」と力を込めた。
北京世界陸上は、16年リオ五輪につながる舞台。8位以内で日本人トップなら、五輪即内定。被災地へ、何よりのエールとなる。「世界と戦うため、もう一段上げていきたい」。恩返しは、始まったばかりだ。(細野 友司)
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