前に紹介した森田療法では、悪いところを治そうと努力することはやめるように指導します。それは、あまり効果がないばかりか、逆に悪い方向に行くことが多いのだと言います。対人恐怖の人が、緊張しないように努力しても、それはうまくいきません。人前では緊張するのが人間なのです。
その自然に反して、緊張をとろうとすれば失敗します。その結果としてますます緊張は固定化して取れなくなるのです。努力しても効果がないことはやめないといけません。そして、人に良く思われたいのなら、人に親切にすれば好かれます。このように努力することが効果につながることをするように勧めるのです。
仕事探しでも同じことが起きていたのです。仕事を探しても見つからないために、ただ、仕事がないだけでなく、見つけられない自分はダメ人間だと考えて憂鬱になってしまっていました。それで、仕事探しをやめて、楽しいことを探して実践することにしました。
大相撲を見たり、府中競馬場に行ったり、鎌倉を歩いたり、ミュージカルを見たり、とにかくメンバーの人がやりたいと思うことを1つずつ、グループの力を借りて実践してきました。
集まっている人たちの顔が明るくなり、それとともに元気も出てきました。自分に合った仕事を見つけて取り組む人も出てきました。良くしないといけない、どうしたら良くなるだろうかと考えることがストレスになって悪い方向に向かっていたのです。そこから解放されて、本来のその人のいいところが見えてきたのです。
松崎さんが紹介しているうつ病の係長さんのことを考えてみましょう。理解のない上司から怠け者扱いをされて怒鳴られていました。無理解な叱責や、なんとかそこから抜け出そうとする努力が、すべてストレスになって、係長の治っていく力を阻害していたのでしょう。悪循環に陥っていました。
しかし、幸いなことに、うつの体験がある人がそばにいて、話を聴いてくれました。どうやって乗り越えるかの相談にものってくれました。そのような理解をしてくれる人がいることで、そのストレスは少なくなったのではないでしょうか。そのような人が、話を聴いてあげるだけで違ってくるのです。松崎さんの存在は、その係長さんにとってサポートになったと思います。
そのような人がいない場合、セルフヘルプグループが必要になってくるのです。病気になった苦しみや悩みは、同じ立場を体験した人でないとわからないのです。専門家がいう事よりも、同じ体験をした人の助言の方がより効果があるのです。
(筆: 増野肇)