高知に生まれた森田正馬先生は、身体も弱いし、神経質で、いつも体の不調を気にしていました。帝国大学の医学部に入り、病気の勉強が始まると、その病気に自分がかかっているような気がして心配になるのでした。授業の後で自分がその病気ではないかと先生に質問をすることがたびたびあったので「森田お前は神経衰弱だ。学校を休んで家で寝ている」と言われます。
家で休んでいても一向調子が良くならない。一方、定期試験も近づいてくる。これではダメだと、休むのをやめて、死んでもいいからと勉強に取り組んだところ、試験がパスしただけでなく体の方も調子が良くなりました。
このような自分の体験を参考にして作り出したのが森田療法です。身体の状態が気になったり、不安があっても、それを治そうとすると注意がそこに固定して、気になるのが強くなるのです。緊張している人が緊張をとろうとするとますます緊張してそれが固定化してしまうのです。ですから、森田療法では、治そうとするのはやめて、不安のままにやることをやれと教えます。
パニック障害の人が、それを取り除こうとしても、かえって失敗し、ますます不安が取れなくなるのです。不安を認めて、無理に取り除こうとしないで、そこでやれることに取り組んでいれば、自然に不安は消えていくのです。そのような生き方を指導するのが森田療法です。
そのようなわけで、森田療法では、悪いところを見つけて治すということはしません。悪いところはそのままにして、その人のいいところを伸ばしていくのです。少しぐらい悪いところがあってもそれは隠れてしまいます。悪いところを治そうと躍起になると、脳のその部分が刺激されて、ますますそのネットワークが強化されてしまうのです。
松崎さんの体験していることを読んで森田療法に共通する発見をされているなと思ったので書いてみました。
(筆: 増野肇)