さて、もうすぐ映画のアカデミー賞発表の日がやってきます。

先日、
本年度、10部門に11ノミネートされているという
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
を見てきました。

実は私は映画館で映画を見ることは
滅多にないのですが、
この前観たインド映画の「RRR」が
あまりにも素晴らしかったので
また、あのような血湧き肉躍る
精神の体幹のパイプを大掃除してくれるような
大傑作を期待して
映画館に行きました。

 

なんせアカデミー賞の大本命ですからねぇ。

RRRは開始直後から
ジェットコースターに乗ったような
ワクワク感が味わえ、
登場人物にすっかり感情移入し、
CGと大掛かりな実写ロケが
巧みに使われたアクションシーンに
ハラハラドキドキ、
感動の涙は出るわ、
不条理な運命に弄ばれるという
深いテーマを扱いながらも
見事に伏線を回収した
脚本には感心し、
頭も心も体も揺さぶられて
3時間という長い上演時間が
あっという間に過ぎたので、
「これぞ映画館で映画を見る体験だあ!」
と大満足したので、
同様に興奮できることを
期待していました。

なんせアカデミー賞大本命の
10部門ノミネートですからね!

それで、始まってから、
さあいつ面白くなるのかな、
いつ笑わせてくれるのかな、
いつ泣けるのかな、って
ずーっと待ってたのですが、
残念ながら結局最後まで、
一回も笑うことも、
涙が込み上げることも
ありませんでした。
(ここで涙)

映像は素晴らしかったですよ。
おそらく最新の技術を駆使した
カンフーのアクションシーンも
見事でしたよ。

親子の葛藤、倦怠期夫婦、
LGBT、移民、貧困、経済格差、
ユダヤ支配に対する中国の台頭、
などなど、
現代アメリカ社会の
ありとあらゆる問題が
てんこ盛り。


しかも、それを
ストレートにシリアスに扱わずに
アクション満載で

マルチバースというSF仕立ての
エンターテインメントにしましたよ〜!
どないだっか〜!!
僕たち凄いでしょ〜!!!
って感じですか。

だけど、全部どこか既視感があって
感心はしても感動はしませんでした。
見終わった時には、
体温はかえって下がってたかも。

鑑賞した後、
こういう感覚になるのって、
以前にもあったなぁ。

「裸の銃を持つ男」。
これを、私は1988年に
アメリカの地方都市の
ショッピングモールの映画館で
観たのですが、
周りのアメリカ人観客が
大笑いしているのに、
全然笑えませんでした。

英語がわからなかったことも
あるかもしれませんが、
それより、何より
ギャグセンスが全然違ったの。
 

なんであんなヒネリも何もない

下品なネタに

笑えるの?


あと「イーストウィックの魔女達」と
「永遠に美しく」も、
出演者に惹かれて観に行ったんだけど、
映像の技術などに感心はしたけど
作品全体には感動できなかった。
なんだか寒〜い感じだけが残った。


「RRR」と「エブエブ」は何が違うんだろうか。
「RRR」にあって「エブエブ」にないものとは?

これは、根拠の全くない、
単なる私個人の思いつきなんだけど、
 

プロデユーサーや監督の志の差、
人間に対する愛の差、
芸術に対する敬意の差、
なんじゃあないだろうか。

プロデユーサーや監督の熱量が
周りのスタッフを巻き込んで、
奇跡的な作品が
生まれるべくして生まれる。
 

そんな熱量の基になる
志、愛、尊敬が
「エブエブ」には感じられなかったの。

「どう、これ、

知的で面白いでしょ?
今風でしょ?」っていう
作り手のエゴが見えちゃった。

ただ、実際に見てよかった点もある。
それは、女優陣の熱演だ。

主役のミシェル・ヨーが
観られただけでも
映画館に足を運んだ価値はあった。
どんなみすぼらしい格好をしても、
久保菜穂子のような凛とした
美しい佇まいで、
アジア人女性の美を
体現してくれていた。
アジア系最優秀主演女優賞の
第1号になってくれたら

とっても嬉しい!

そして、税務官吏役の
ジェイミー・リー・カーチス。
よくもこんな屈辱的な演出に
耐えて応えて演じてくれたものだ。
あっぱれな女優魂に感服しましたよ。

そして、娘役のステファニー・スー。
女優は外見だけじゃないっていう、
キャシー・ベイツみたいな
演技派個性俳優に育っていってほしいなぁ。

 

「RRR」には現在のインドの
太陽が昇るような
国力そのものの勢いがあった。

もし「エブエブ」が作品賞を取ったら
それは、もうかつての
パックスアメリカーナは
2度と戻ってこないけど、
なんとか蘇生措置で
生き延びたいっていう
現代アメリカの
足掻きのような気がする。

などと、

つらつらと個人的な感想を
ダダ流ししてしまいました。

長々と読んでいただきありがとうございました。

=============================
「シン高1生対象高校英語準備春期講習」
只今受付中!