今回は、
魚の「サバ=鯖」の漢字が
金属の「さび=錆」の漢字が
画竜点睛の「澄み切った目=睛」の漢字が
という、何度か受けた事のある疑問にお答えしたいと思います。
以下、「鯖」を例に話します。
「鯖」と「錆」は同じパターンです。
しかし、「睛」は別ですので、記事の最後の方で言及します。
まず、生活で親しみのある「青」という漢字が有りますよね?
実はこの「青」の旧字体は、「月」の部分を「円」と書きます。
(「靑」つまり
と書きます。)
鯖は「魚+青」な訳ですが、ここで1つ「鯖」と「青」の大きな違いが有ります。
それは、「常用漢字」に入っているか、入っていないか、という事です。
「新字体・旧字体」というのは、「常用漢字の一部と、一部の人名用漢字」に該当する漢字にしか、存在しません。
つまり、青には旧字体・新字体が有っても、鯖には旧字体も新字体も無い訳です。
そうです、鯖は「鯖+青の旧字体」つまり
と書くのが(活字上は)、正しい漢字なのです。
しかし、このページを御覧になっている方の環境によって、どちらで表示されているかは異なるはずです。
コレは何故かといいますと、携帯電話及び一部のパソコンでは、一部の漢字に「略字」を採用しているからなのです。
これを「パソコン略字」とか「拡張新字体」というのですが、大体が「常用漢字の略し方と同じ略し方」をしています。
つまり、
も、「常用漢字と同じように略す」と「魚+青の新字体」、つまり
となる訳なのです。
ですから、本来、パソコンで表示されるべき漢字は「魚+青の旧字体
」なのに、一部の規格では「魚+青の新字体
」となってしまっているのです。
しかし、最近行なわれた規格の改定で、パソコン略字は「排除する」方針になりました。
そこで、インターネットの接続されたパソコンや、新しいパソコンでは、大体が「魚+青の旧字体
」で表示されます。
(ちなみに、私のパソコンでは、きちんと「魚+青の旧字体
」で表示されています。)
補足としてですが…
「青の旧字体は下が円」と言っていますが、実は当用漢字や常用漢字が出来るよりもずっと昔から「月の青」で書かれてきました。
ですので、漢字検定等ではどちらで書いても良い事になっています。(ただし、漢字検定1級と準1級に限る)
勿論、日常生活ではどちらで書いても大丈夫です。
尚、「画竜点睛」で用いる「睛」ですが、これは活字上「目+青の旧字体」です。
これも手書きでは
と
のどちらで書いても良いのですが、
「睛」の字はパソコン略字の採用されるグループ(JIS第一水準といいます)に該当せず、JIS第二水準に該当した為、パソコン略字は採用されていません。
ですから、錆や鯖を携帯電話やパソコンで見慣れた や と書く人は結構居ても、
睛を
と書く人は殆ど居ないんですね。(差に気づかなかった故に青と書いている人は見かけますが、、、)
(※ちなみにJISは第1~4水準までありますが、これは(大まかに)使用頻度の順番になっています。)
「青」は旧字体が「 」とはいえ、伝統的な手書き体は「青」です。
は「康煕(コウキ)字典体」と言い、辞書が生み出してしまった疑惑の高い字なのです。
しかし、現在の権威ある字典とされる「康煕字典」ですので、これに従う事は決して悪い事とは言い切れません。
新字体の存在する漢字以外について、「伝統的な書き方」で統一するのか、「権威ある康煕字典の康煕字典体」で統一するのか、どちらかが好ましいですね。
どっちつかずで「錆」「鯖」は「月」で、睛は「円」とするように、パソコンの規格に踊らされてしまうのは、ちょっと恥ずかしい事かも知れません。