○双子の兄



・・・。

・・・・・・。

静かで、すごく懐かしい声。私によく似た顔。成長していても、分かる。


「薫!?」

「久しぶりだね、千鶴。ついでにそこのハエも。」

薫がチラっと平助君の方を見た。

「なっ!お前!!って・・・千鶴がここ(薄桜鬼学園)だし、もしかしたらって思ってたけど、本気で入学してたなんてな・・・。

でも、千鶴と一緒に暮らしてるくせになんで久しぶりなんだよ。」


薫が眉を寄せる。私は薫が口を開こうとするのをさえぎる。

「実は・・・わけあって薫は違う家で暮らしてるんだ。」

「・・・へぇー。」

平助君は私の表情から聞いちゃけないと思ったのか、それ以上は聞いてこなかった。

私と平助君の会話を聞きながら薫はさらに眉を寄せる。


「何?兄弟?まぁー、顔がそっくりだし。そう考えるのが普通だよね。」

「あ・・・はい。薫は双子の兄です。」

沖田先輩が薫の方をじっと見る。

薫は沖田先輩をきっと睨む。

「顔が似てるだけで、性格は似てないみたいだね。」

「ぅるせぇ。」


沖田先輩は薫と違い、にこっと笑った。

・・・・・逆に怖いです!!


私たちの会話を見守っていた斎藤先輩が口を開く。

「話は後にしないか?もうすぐ授業開始のチャイムが鳴るのだが・・・」

平助君ははっ、と時計を見ると私の手を掴んで、走りだした。

2年教室と1年教室は階が違うため、私と薫。平助君と沖田先輩と斎藤先輩に分かれた。

2人きりになった瞬間、薫が私に何かを言おうとした。


「なぁ、ちづ『キーンコーンカーンコーン♪』」

その瞬間にチャイムが鳴った。

「ごめん。話は後で!」

と、私が教室に入る。

薫は隣のクラスだったみたい。

何で、気付かなかったんだろう。

1時間目の授業の先生が5分遅れてきたため、私は授業に間にあった。


休み時間になって薫はすぐに私のクラスに来た。

「で?何で嘘ついたんだよ。やっぱりまだ藤堂にも話してないんだ。」

「・・・ぅん。心配かけたくなかったから。平助君って優しいしちょっと心配症だしね・・・。

 先生や、先輩たちにもいってないよ。・・・あ、学園長なら知ってるよ。」


「両親がいないことも?」


「うん。」

薫は私の返事を聞いて何かを考えるようにじっと下を向いていた。

そして、いきなり焦ったように顔をあげた。


「親せきの家から通ってんの?」

「ぃや、昔家族4人で住んでた家で一人暮らししてるよ。」

私の言葉を聞いて、薫は目を見開いた。

「一人暮らし?それも、皆に内緒?」

「ぅん。そう・・・かな?」

薫は深いため息をついた。

「まぁ、いいや。俺には関係ないしな。でも・・・何かあったら、言え。」

「ぅん、ありがとお。」

薫は少し私を突き放すような言い方はしたけど、最後の一言が私にとってすごく嬉しかった。