入学式
~椎名鈴香~
「このたびは、ご入学おめでとうございます。」
体育館で、校長のベタな挨拶をうずうずしながら聞いていると隣に座っていた早苗が
呆れた様子で話しかけてきた。
「そんなに校長の話が面白いの?」
「違うよー。ただ、早く新しい教室に行きたくって!しかも今年も早苗と同じクラスなんてさ。」
「それは私も嬉しいけど、一人で笑ってたら変に思われちゃうよ?」
「う、うん。」
そうなんです。大好きな私の大親友、早苗とまた同じクラスなんだよね。
ほんとわたしって今年ツいてる!
受かる確率がほとんどなかったこの高校に行けたのも運だと思うし。
勉強を教えてくれた早苗とお兄ちゃんのおかげでもあるのだけど。
隣を見るとなんだかんだ言って早苗も嬉しそうに笑ってるから私もくすっと笑う。
これからホント楽しみだな!
~山本早苗~
あ~。座ってても落ち着かないなあ。緊張する。
ふと、隣の人の視線が気になった。
でもよく見るとその視線は私に向けられた物ではないようで…
隣を見ると、鈴香が何やら一人でくすくす笑っていた。全くー。
「そんなに校長の話が面白いの?」
呆れ顔の私の声に笑顔が増した鈴香が振り向く。鈴香の笑顔を見るとさっきまでの緊張が溶けた気がした。不思議だな。
「違うよー。ただ、早く新しい教室に行きたくって!しかも今年も早苗と同じさ。」
「それは私も嬉しいけど、一人で笑ってたら変に思われちゃうよ?」
「う、うん。」
努めて静かにする鈴香を見てると、なんだか笑えてきちゃって。
隣を見ると鈴香も笑ってた。鈴香と一緒でホントによかったな。
~相楽優斗~
はあ。ねみぃ。
校長のつまらない話なんて耳に入ってくるわけもなく、俺は大きなあくびをした。
俺はさっきから気になっているものが二つあった。
一つは女子の視線。こんな物はもう慣れたけど、やっぱり不愉快だな。
もう一つは蓮の寝息。隣を見ると蓮は気持ちよさそうに爆睡していた。
「くそ。蓮のやつ。」
そう。俺がこんなところに眠い中いる理由はアイツのせいだ。
朝っぱらからうちに来たかと思ったら
「知り合いいないのに一人で行くなんて嫌だ。」
と、パジャマ姿の俺を無理やり連れ出し、俺は車の中で着替えさせられるハメに…。
あいつのことだから友達なんて10秒で作れるだろ。
入学式なんて絶対来たくなかったのに。
どうせこの後理事長に呼ばれる。つまり親父に会わなきゃならない。
親父といたくないから一人暮らしを始めたのに。
母さんに学校だけはうちの高校に通えといわれ、仕方なくこうした。
まあ、自分の親がやってる高校なら自由もきくしな。
高校生活は好きに出来そうだ。親父と関わらなければそれでいい。
~久遠蓮~
ー朝ー
携帯の着信音で目が覚めた。
画面を見ると叔父さんの名前。うわぁー。怖いな。(笑)
でも叔父さんには逆らえないから出るしかない。
「もしもし。叔父さん、朝からどうしたの?」
「すまんな。頼みがあるんだ。入学式に優斗を引っ張ってきてくれないか?」
あー。めんどうなことをー。はぁ。
「分かったよ。その代り、俺のロッカー大きくしといてよ?」
「ああ。それなら、優斗とお前と来年くる陸斗のために特別室を作っておいた。」
「まじか!ありがと叔父さん!」
「ああ。じゃあさっきの件頼んだよ。」
「オッケー。任せて。」
やったねー。学校に自分たちだけの部屋があれば休み時間はそこに逃げればいいか。
これで女子に追いまわされる心配はない。優斗も安心だろうな。
あいつのイケメン度はハンパないから。
さてと、あいつを迎えにいくか。
