先日の夜、たまたまつけたテレビでやっていたドラマを紹介します。

 

 


うらみわびの【このドラマがおもしろい!

第19回
 
NHKドラマ 『うつ病九段
BSプレミアム 2020年12月20日21時 放送
 
 

 どんな話?

 
先崎学は将棋のプロ棋士のなかでも最高位の九段のトップ棋士。
そんな彼が突然、将棋を指せなくなった
 
うつ病
それが彼に下された病名だった。
事の発端はプロ棋士の公式戦におけるAIソフトの不正使用疑惑。
当時広報担当だった学は事件の説明に追われる。
そのストレスが彼を追い込んだのだ。
 
小さなころから「天才」と目されてきた勝負師は「俺には将棋しかない」と嘆く。
そんな彼がうつ病との闘いとして選んだのが将棋界への復帰だった。
 
 
うつ病のリアルを描きながら一人の男とその家族の葛藤を映し出す。感動の実話。
 
 
 

 キャスト(敬称略)

 
先崎学: 安田顕
 
先崎繭: 内田有紀
 
先崎春香: 南沙良
 
先崎章: 高橋克実
 
 
中村太地: 渡部豪太
 
鈴木大介: 宇梶剛士
 
佐藤康光: 前川泰之
 
羽生善治: 土屋伸之
 
藤井聡太: 鈴木福
 
田中悠一: 永嶋柊吾
 
米長明子: 高畑淳子
 
 

 私との共通点

 
 このドラマに惹かれたのは、私と共通点が多いところですね。
 私も小中学生の頃は将棋に打ち込んでいました。ですので、先崎学さんはもちろん、作中に出てくる将棋界のプロ棋士の面々はもちろん知っています。
 同時に今回のテーマは『うつ病』。うつ病を患ったプロ棋士が将棋界に復帰するまでの過程を描く、ということで非常に興味深かった。
 
 本作には本のほうで原作がありまして、私も本の存在を知った時から興味を持っていました。初めてその存在を知った時は衝撃でしたね。「まさかあの先崎さんが……」と思って。将棋連盟の広報にぴったりな明るい方だという印象だったので彼がうつ病になったということが衝撃的でした。
 
 
【コミック】
 
 

 配役がいいね

 
このドラマを見て驚いたのが配役の妙。特に将棋棋士の面々がご本人にそっくりなんで驚きました。
そこから製作陣がこのドラマに賭ける想いというのが感じられます。
 
 
 
 

 勝負がしたい!

 
先崎さんが医者から言われたのは「将棋を指せるようになるまでいは最低でも6カ月2年はかかるでしょう」という言葉。
さすがにこれ言われちゃったら勝負師は泣いちゃいますよね。
 
うつ病になってから社会復帰するまでには3年ほどかかる、というのが私が当事者の話を聞いているなかでの感触です。
もちろん個人差はあります。でも、それだけうつ病は辛くて重い、息の長い闘いなのです。
 
 
将棋は決断の連続。常に自分の作戦、相手の作戦、数十手先までを読むと何通りもの分岐があります。
ですからプロの対局(試合)ともなると持ち時間が一人10時間だったり、1手指すのに1時間以上考えたりするんですね。プロの将棋界とはそういうところです。
 
この決断の連続がかなりの精神力を必要とします。これがうつ病だと将棋は指せない、といわれる所以でしょう。
 
私が中学の頃、将棋部の顧問が毎日、部員に外周を課していました。
顧問いわく「将棋は体力」なのだとか。つまり、最後に勝つのは思考する体力のある者だ、というのです。
これは真実でしょう。脳のエネルギーを使い果たしたほうが先に負けてしまいます。だから私にとって大会での必需品はチョコレートなんです。糖分補給食品です。
 
ちなみに、大学時代の先輩はある日、1日中将棋を指していたそうですが、体重が5キロほどへったそうです。将棋はそれほどエネルギーを使うスポーツなのです!
 
だから、うつ病になると将棋は難しいのよね。
 
 

 うつ病特有の症状!?

 
作中で学は色を認識できなくなってしまいます。これはうつ病にはよくみられる症状なのですかね。他の作品では鴨志田一さんの小説『青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない』は『こころの傷』をテーマにしているのですが、ここでも主人公の咲太が中学生時代に心に傷を負って色を認識できなくなる、という描写があります。
 
うつ病は『脳の病気』といわれますが、認知機能に影響を生じさせることは想像できます。
 
もう少し身近な例では「文字が読めない」とか「計算ができない」というのがありますね。
私はこのどちらも経験したことがあります。
はじめは単なる集中力の欠如かと思っていたのですが、数字も認識できるし文字も読めることは読めるんです。でも、数式を処理できなかったり、「何が書いてあるのか」内容を理解できない、ということが起こる。これには私も参りました。
 
 
今ではこの症状が打つ症状のバロメーターの一つになっています。文字が読めなかったり、計算ができなかったり、なんとなくぼーっとしてしまうときは無理をせずに休息をとるようにしています。
このようにしてうまく症状と付き合っていくしかないのだと思うんです。
 
 
 
 
 

 兄の存在

 
作中では学と彼の兄がSNSやメール、対面を通じてお互いに連絡を取り合っている場面が印象的でした。
これは以前に見たドラマ『こもりびと』とも相通ずるところがあるように感じます。
 
私はうつ病になってから「誰とも関わりたくない」という心理が強く働きました。LINEなんかはかれこれ1年以上使っていません。
 
これはしょうがないことだとは思うんです。なぜなら、うつ病は自分のことすらままならない精神状態。誰かとコミュニケーションをとるなんて到底無理なんです。
 
でも、心のどこかで【寂しさ】はあるんです。誰とも関わらないことで孤立していき、それが原因で心がまた病んでしまう、ということもあります。
 
だからこそ、うつ病は自分のことが第一だから仕方がない、と自分の心の焦りと和解しなくてはいけないし、余裕のあるときは人と交流していくことも大切だと実感しています。
 
 

 うつ病には散歩


これはもう、うつ病に関するほとんどのメディア、人が提唱していますね。間違いありません。うつ病には【散歩】。これに勝る薬はありません!

 
私も実感しています。反対に散歩を怠った時の気分の落ち込みが
恐ろしい
 
ここで改めて散歩の大切さを実感する日々です。
 
 
ただ、毎日必ず散歩をしなくてはいけないか、といわれたら疑問です。
なぜなら、うつ病は気分の起伏が非常に大きいですから、外に出て歩けない日も当然あるんです。そんな日に「散歩はうつ病の一番の薬だから歩かないとダメ」という人がいますが、どうなんでしょう。
 
確かに、私たちが服用するようないわゆる「お薬」。例えば糖尿病のインスリン注射や心臓病の薬は服用を忘れたらまずいですよね。それと同じ感覚で散歩を扱うべきなのも分かります。
 
ただ、散歩には運動という身体性を伴うのでけっこうしんどいんですよね。
毎日やるにこしたことはありません。
でも、できない自分も受け入れてあげたい。そんな心の葛藤が私の中にはあります。
少なくとも自分を許せない人はうつ病を治すことはできないでしょう。
 
 
 

 うつ病の人とどう接する

 
病院に入院する学のもとに仲間のプロ棋士たちが見舞いにくるシーンがあります。
そこで彼らは学にかける言葉に戸惑うんですよね。
 
 
励ましていいのだろうか……
 
「頑張れ」って言っちゃまずいよな……
 
 
学も言っていましたが、本人にとっては励ましの言葉は正直嬉しいのではないでしょうか。
でも、「頑張れ」とは言って欲しくないですね。「もっとこうしろ」とも言って欲しくない。
なぜなら、もうすでに【頑張っている】んですよ。
 
私はときどき冗談まじりにこう言います。
 
 
私はそこそこ頑張っていますよ。どれくらい頑張ってるかっていうと……うつ病になっちゃうくらい頑張ってます!
 
 
うつ病の当事者が求めているのは叱咤激励ではなく、共感と純粋な励ましなんです。
良くも悪くも私たちは自分で自分を必要以上に反省して戒めているんです。だからお叱りはこれ以上必要ないんです。 
 
 
 

 兄の言葉

 
 
兄「この先、失ったものの大きさに負けないでいてくれればいいんだ
 
 
この言葉には痺れましたね。
本当にそうだと思います。うつ病になると失うものは多いんです。集中力も落ちます。思考力も落ちます。自信を無くします。友達を失います。恋人を失います。家族を傷つけます。
とにかくいろいろ負の出来事が起こるんです。
もちろん個人差はありますが
 
 
しかも、うつ病は「治らない病気」ともいわれています。正確にいうと「完治しない病気」です。一度ひびのはいった心は元には戻りません。まさに「ハートはガラス」です。
 
 
それでも私たちは前を向いて生きるべきでしょう。
過去は変えることはできません。でもこれからのことはつくっていけます。
 
うつ症状に支配されるとどうしても人を傷つける言動をとってしまう私ですが、その分、「優しくありたい」という想いも人一倍強いと自負しています。
 
失った10のものよりも、施したのことにフォーカスして生きる。
これは十分過ぎるくらいに立派な生き方なのではないでしょうか。
 
 
最後に、このドラマの最後にも書かれていますが「うつ病の症状には個人差があります」。
つまり自分の辛さは他者のそれとは比較なんてできないんです。
うつ病との闘病において他者比較ほど毒なものはありません。
 
 
心の傷に傷ついている人へ。
どうか自分を大切に。
あなたの痛みはあなただけのものだから。
 
 
 
 
将棋を諦めかけたプロ棋士が将棋でうつ病と闘う。最後は愛弟子との対局で「美しい手」を取り戻す。
構成といい人物描写といい考え込まれた1作でした。
 
 
 

 今日の一曲♪

 
『Hello, future vontact!』(2015)
 
(歌:内田真礼 歌詞:田淵智也 作曲:田淵智也)
 
 
来年もよい一年でありますように。
 
 

 

 

 
 
 
 
 

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

 

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