うらみわびの【この本がおもしろい!

第27回
 
村田沙耶香 『コンビニ人間』 文藝春秋 2018
 
 
 
 
 

勝手に評価表

ストーリー

☆☆☆☆

アクション

☆☆

感動

☆☆

 
 
 

改めて私たちに問う

 
 
 
 

 どんな話?

 
コンビニ店員歴18年。ちょうど人生の半分をコンビニ店員という肩書を持って生きてきた古倉にとってコンビニは切っても切り離せない存在だった。
 
コンビニ店員をしている時が一番落ち着く。
 
幼少期から自分は「普通」の子ではない、と言われ続けて育った古倉にとってコンビニは自らの存在を肯定してくれる場所。
 
そんな古倉のもとに新人アルバイトとして入ってきた白羽。
勤務態度が悪く、独特の価値観をもつ白羽との関わりを通して自身と社会の「普通」について再考させられる古倉。
 
後にそれは大きな渦となり古倉とその周りの世界を変化させていく……
 
 
 
 
 

 海外でも評価を受ける名著

 
この『コンビニ人間は』今年の全米図書賞、翻訳文学部門の最終選考に選ばれて話題となりました。
 
その魅力はなんといってもコンビニ文化
これは日本独特のものといってもいいでしょう。
 
私はこれまで英語圏4か国を訪れましたが、日本のコンビニほど「コンビニエンス」なストアはありませんでした。
 
それくらい日本のコンビニはある意味でブランド化しているのです。
最近の話だと、日本のセブンイレブン・ジャパンがアメリカのセブンイレブン本社を買収したのが興味深いニュースでしたね。
 
日本のコンビニの魅力。
それは徹底された【お客様重視】の接客にある、と考えます。
 
高品質のサービスと高い販売目標。そこから培われるプロとしての店員の感覚。
それらが細かく鮮やかに描かれているのが『コンビニ人間』といえるでしょう。
 
 
 
海外では様子が異なっています。
これは私の経験ですが、イギリスでのこと。
 
イギリスのお店は閉店が早いです。夕方5時頃には閉店してしまいます。
ちょうど私がストアにお水を買いに行ったのが閉店間際でした。
 
閉店間際に現れた客に対して怪訝な顔をする従業員。
会計の際にもぶっきらぼうにあしらわれました。
 
一緒に買い物をした私の友人は会計の際にお札で支払おうとすると、
 
 
釣銭がたくさん出るから、もっと細かく出せないのか
 
 
とまくしたてられました。
仕方なく、私が小銭でたてかえたのを覚えています。
 
 
海外のお店では「お客さま」というより「店員さま」という表現が合うかもしれません。
気に入らない客には堂々と言ってきます。
 
こういうところでは理不尽なクレームなんてものはないのかな、と思わされることがしばしばです。
 
だからこそ、日本のお客様重視のコンビニの様子は海外の人たちにとって真新しく映えるのです。
このような日本と海外のコンビニの【文化】の違いが『コンビニ人間』のヒットの足掛かりとなったことは確かでしょう。
 
同時にコンビニで働いたことのある筆者だからこそ描けるコンビニの裏側マインドの部分にも光を当てているのが本書の特徴。
 
これは日本人が読んでも十分に楽しめる作品です!
 
 
 

 不気味だよね

この『コンビニ人間』とはなんとも妙なタイトル。類似する単語を連想すると「ゲーム人間」や「仕事人間」と言ったところでしょうか。
 
そう。「コンビニ人間」。つまり、コンビニで働くことに人生を捧げる主人公の人生禄ともいえる本書。
 
 
ところで本書の表紙のイラストを見てみると……
 
 
 
 
 
なんだか不思議なイラストですね。
本屋で見たら「はっ」っと目が奪われる、そんなイラスト。
 
でも、これが何を意味しているのか、がよく分からない。
 
 
 
 
なんか突き出ているし、
 
 
 
 
爆発しちゃってるし、
 
 


ってかガイコツ転がってますけど!!
 
 
こうして見てみるとなんだか不気味……。
 
 
そう、【不気味】。
この不気味という雰囲気、オーラが本書のまとっているものだと私は思います。
 
何が不気味かっていうと、社会なんです。
 
 
社会が私たちに突き付ける「普通」。
それがとっても不気味なんです。本書はそれを私たちに訴えかけます。
 
高校卒業、その後は就職か大学に出る。正社員で働くのがスタンダード。30代までには結婚しないと恥ずかしい……などなど。
 
 
そういった目に見えない人生の【レール】が社会には存在する
 
 
そのレールを外れずに生きていることが正常な人間だとみなされる。
 反対に、学校を中退、未婚、恋愛経験なし、無職、非正規労働者、外国籍……。程度の差はあれど、日本社会には特定のフィールドにいる人々、特定のカテゴリーに分類される人々に対する風当たりが強いのは確かだろう。
 
 
それは本人の自業自得なの……?
 
 
 世の中には社会のレールから外れた人をあざ笑う人がいる。反対に過剰なほどに心配して手を差し伸べようとする人がいる。
どちらにしろ当事者にとっては生きづらい世界
 
 
本書は改めて問う。
 
 
「『普通』ってなに?」
 
 
 
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 百聞は一読に如かず

 
 
 

 今日の一曲♪

 
『東京ウインターセッション feat.瀬戸口優・榎本夏樹・望月蒼太・早坂あかり・芹澤春輝・合田美桜』(2017)
 
(歌:HoneyWorks 作詞:HoneyWorks 作曲:HoneyWorks
 
 
今年はイルミネーション見に行けなくて残念だなぁ。

 

 

 

 

 
 
【収録曲】
  1. 東京ウインターセッション feat.瀬戸口優・榎本夏樹・望月蒼太・早坂あかり・芹澤春輝・合田美桜
  2. 聞こえますか feat.春輝<幼少期>
  3. 恋という贈り物 meets.天月
  4. Re:初恋の絵本 feat.合田美桜
  5. 東京ウインターセッション feat.瀬戸口優・榎本夏樹・望月蒼太・早坂あかり・芹澤春輝・合田美桜<Instrumental>
 
 
 
 
 

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

 

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