うらみわびの【このアニメがおもしろい!】
第16回。
原作:白井カイウ 製作:約束のネバーランド製作委員会
『約束のネバーランド』(2019)
勝手に評価表 | |
ストーリー | ☆☆☆☆☆ |
アクション | ☆☆☆☆☆ |
感動 | ☆☆☆ |
どんな話?
身寄りのない子どもたちが暮らす家 グレイス=フィールドハウス。
そこでは38人の子どもたちが優しい「ママ」 イザベラのもとで幸せに暮らしていた。
いつも優しいママ
おいしいごはん
おそろいの真っ白なシャツ
首筋に刻まれたナンバー
・
・
・
これが私たちの日常。
これからも幸せな日が続くと思っていた……。
グレイス=フィールドハウスにはある掟があった。
それは森の中にある「柵の外に出てはいけない」というもの。
子どもたちはそんなママの教えを守って暮らしていた。
ある日、コニーが里子に出されることに。
突然のコニーとの別れを惜しむ子供たち。
旅立ちの日。11歳のエマとノーマンはコニーの忘れ物を届けるために掟を破り、柵の外へ出てしまう。
そこで二人は恐るべき光景を目にする……。
ここから逃げなくちゃ!
ママは敵だ!
私たちはなぜ親の記憶がないのか……
なぜ施設の外に出てはいけないのか……
私たちの存在理由とは……
あらゆる事実が明るみになっていき、真実の糸が絡み合っていく・・・
そうして紡ぎあがっていく「真実」を知ったとき、子どもたちのとる行動とは。
エマとノーマン、そしてレイ。子どもたちの中でもとりわけ頭の良い年長の3人が中心となり、農園と呼ばれし孤児院 グレイス=フィールドハウスからの脱走を画策する!
キャスト (敬称略)
エマ: 諸星すみれ
ノーマン: 内田真礼
レイ: 伊瀬茉莉也
ドン: 植木慎英
ギルダ: Lynn
イザベラ: 甲斐田裕子
クローネ: 藤田奈央
この作品。今月の18日には実写版映画が放映開始。
来月にはアニメ第2期の放送が決まっており、現在かなりアツいシリーズですね。
絶対に生きて出てみせる!
私たちの自由のために。
頭脳戦
本作の魅力はなんといっても子どもたちと大人たちとの頭脳戦!
画策と裏切りの応酬。誰を信じて誰を疑うか?
見ている方もハラハラドキドキの展開が続きます。
それでいて、戦いがかなり高度。
子ども側も大人側もまさにしのぎを削っている、という状態。
それが『約束のネバーランド』。
相手は強大。脱出は完璧でなくてはならない。
そんななかで子どもたちはありとあらゆる可能性を視野にいれなくてはなりません。
そんな緊張感があります。
誰一人残さない!
本作の主人公として描かれているエマは頭脳明晰、快活ながら誰一人見捨てない、という優しさを持ち合わせています。そんな彼女の優しさが他の子どもたちとの大きな違いといえます。
彼女はなにがあってもあきらめない!
一人も残さずにハウスを脱出することを目指します。
そんな彼女の志が周りの子どもたちの心を変えていきます。
集団心理
しかし、30人以上の子どもたちが大人にバレずに施設を抜け出すのは至難の業。
ここで突き付けられるのが人間としての心理。
それはゲーム理論。つまり、それぞれの人間(プレイヤー)が自らの最大の利益のために行動したとき、それは集団としては最大の利益にならない、ということ。
子どもたちは考えるのである。
リスクをとって脱出を試みるよりも仲間を大人に売ったほうが自分が生き残る確率が高いのではないか、と。
ちなみにゲーム理論は2020年のノーベル経済学賞に選ばれたポール・ミルグロムさんとロバートウィルソンさんの研究テーマ。両氏のオークション理論への貢献は多大である、という。
こうしてみると、経済というものはかなり人間味のある分野だと感じます。
さて、子どもたちはお互いに戸惑いながら自らの命を助けるために奮闘します。
そのなかで怒り、悲しみ、喜びという種々の感情が渦巻くのです。
『約束のネバーランド』第4巻
果たして彼ら・彼女らは無事にハウスを抜け出すことができるのか?
無知こそが至福?
この『約束のネバーランド』。これはかなりセンセーショナルな作品といえるでしょう。
その理由の一つとして、舞台が人間社会である、ということがいえる、と思います。
人間には心があります。だから難しい。自他ともに思い通りにならないのが人間なのです。
『約束のネバーランド』では大人も子どももその「人間の罠」にはまっていきます。そこにハラハラ・ドキドキするんですね。
では人間以外の動物には心がないのか。私はある、と考えます。それを示唆する話として家畜が挙げられます。以前聞いた話だと、精肉用の牛を締める際、当日になると牛たちが暴れ出す、といいます。普段とは違う雰囲気をどこからか察知するのでしょう。そして自らの命が短いことを悟ったのか、死の直前には涙を流すのだとか。この話を聞いてからというもの、私の中では動物にも感情はある、と考えるようになりました。
では動物に感情があるとして、私たち人間は生きるためには彼ら・彼女らを食べていかなければならない。広い意味でいえば野菜としての植物もそうですね。植物に感情がある、と感じる方も多いでしょう。人間は動物を植物を食用として栽培・飼育する。そして栽培・飼育される側にも感情がある。私たちは彼ら・彼女らの感情とも向き合わなければならない。
実際に飼育・栽培している人はそのような感情を抱いていないのかもしれません。もしくは感情を押し殺しているのかもしれません。しかしながら、同じく心のある者として私はこのことについてどうしても避けては通れない思いを抱いているのです。
そうしたときに、できるだけ彼ら・彼女らに幸せに生きていてほしいと願うのは当然です。彼らには美味しいものをたくさん食べてもらい、苦痛の少ない一生を過ごしてほしい。死ぬときは苦しいのだから、その苦しみは最小限にしてあげたい。そう思うのです。
あれ、でもこの考えってあの「ママ」イザベラが考えていることと同じではないか、と気づきます。そう。子どもたちにとっての敵である「ママ」イザベラにも愛情があるのです。そしてイザベラにも葛藤があることが想像されます。
このことからすると、イザベラが子どもたちに優しくする理由が少なからず見えてきます。彼女は死を運命付けられた子ども達に対して「無知」を貫くことに決めたのです。
子どもたちには多くを教えない。これがイザベラが施した彼女なりの優しさ。
一方で、子どもたちは人生の指針となる知識を意図的に与えられないのですから憤るのも当然ですね。ここに親子の亀裂が生まれる。
そもそも私たちはどうあれいつかは死ぬことが運命づけられています。ただ、どれだけ生きるかは生き方次第であるし、誰にも分らない。ただ、いつかの死が決まっているだけ。同時に「なんのために生れたのか」、言い換えれば「私は人生の中で何をなすべきなのか」ははじめから決まっている人はいないでしょう。それは究極的にいえば「幸せになるため」という抽象的な答えをはじき出すこともできるし、「これからの人生で決めていく」という実践的な答えで納得させる場合もあります。いずれにせよ、私たちの人生の意味は自分で決めるもので他者に決められるものではないのです。
他方で私たちは食料としてペットとして動物を植物を飼育・栽培します。見方によれば彼ら・彼女らの命を不当に制限しているのかもしれません。
私は魚を飼っています。川で捕まえた魚や人からもらった魚です。なかにはこの世に生を受けたときから我が家にいる魚、エビ、タニシもいます。水槽で泳ぐ彼ら・彼女らをみると良心の呵責を起こすことがあります。「君たちは生まれたときからこの水槽にいる。外の世界を知らない。それは不幸なことかもしれない」。同時にこうも考えるのです。「しかし、知らなけらばそれは不幸ではないのかもしれない。そもそもここが不幸で外の世界が幸福とも限らない」。
でも確実にいえるのは、飼育者である私が彼ら・彼女らの一生を決めてしまっている、ということ。魚と一緒にいて私は幸せですが、同時に考えさせられることがあるのは事実です。
子どもたちの個性が光る
これは「性格」というべきかな。子どもたちはそれぞれ個性があって考え方が違う。でもハウスから「逃げる」という共通の目的をもっている。
なかでも驚き惹かれるのがエマの圧倒的ポジティブ思考!
彼女は誰一人取り残さない、というスタンスを貫きます。
そしてどんな困難に直面ても「なんとかなるさ」というおおらかさがある。
レイは冷静沈着な性格。彼は常に正解を求めており、彼の出す決断はときとして非常ともうつるかもしれませんね。
そして柔軟な発想が持ち味の天才ノーマン。彼にはいろんな意味で騙される。
ノーマンのすごさは困難に直面したときの決断力と修正力だと思う。
これは本当に彼の頭の回転スピードが他とは違う、という感じ。
それぞれが異なる主義主張をしながら共通の目的の達成のため奔走する。
騙し騙されの頭脳バトル。必見です!
【アニメ】
【マンガ】
今日の一曲♪
『Winter has come』(2015)
(歌:内田真礼 作詞:こだまさおり 作曲:R・O・N)
【収録曲】
- Hello, 1st Contact!
- Gimme! Revolution (From "Gonna Be the Twin-Tail!!"
- Karappo Capsule
- Craft Sweet Heart
- Distorted World
- Sousho Innocence
- Winter Has Come
- 私のステージ
- 高鳴りのソルフェージュ
- 世界が形失くしても
- 金色の勇気
- Hello, Future Contact!
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