略語というのは時代の流れに沿って泡沫のように生まれては消えていくものですが、最近の流行りはよくわかっていない。小学生の従妹が「カレカノ」と言っていた。どうやらカップルのことを指すようだ。日本語は4音がしっくりくる。これもまた興味深い。
うらみわびの「このアニメがおもしろい!」第5回。今回は今年の春アニメから。『ダーウィンズゲーム』を見ます。
勝手に評価表 |
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ストーリー |
☆☆☆☆ |
アクション |
☆☆☆☆ |
感動 |
☆☆ |
あらすじ
ごく普通の高校生活を送っていた須藤要(かなめ)はある日突然友人からのメッセージを携帯で受け取る。「フレンドからの救援依頼」。よくあるソーシャルゲームのフレンドのお誘いだと思った要は軽い気持ちでリンクをタッチした。しかし、それは一度始めたら死ぬまでやめられないゲーム、「ダーウィンズゲーム」だった。
学校からの帰り道、要はダーウィンズゲームから対戦の告知を受け取る。次の瞬間、要は見知らぬ着ぐるみの男に命を狙われることとなる・・・。
ダーウィンといえば『種の起源』。スマホゲームで人が殺し合う世界。これは人類が滅ぶ予兆なのか。それとも適者生存への序章に過ぎないのか…。
主人公が命を狙われるゲーム系ホラー。普段はあまり見ないジャンルであるが、上田麗奈さんがヒロイン役を演じられると知り、見てみることしました。
ストーリー全体としてはかなりグロテスク。暴力が苦手な人はご注意を。アクションものというよりは、頭脳戦が展開される。それは自分の命がかかってますものね。狡猾になります。まさに勝ったものが正しい世界。それがダーウィンズゲーム。
特筆すべきは主人公の須藤要。彼は意図せずゲームの世界に迷い込んでしまった。彼は決して戦闘を好まない。できるだけ相手を傷つけずに戦闘を切り抜けようとします。実は彼はかなり強い技(シギル)が使えるのですが、彼はあえてそれを使おうとしません。戦闘もちょっと泥臭い感じ。しかし彼は頭はキレるようで、予想の斜め上をいく戦い方をするのでそこは見どころです。
それでも残虐なダーウィンズゲームの世界。彼は生き残ることはできるのか・・・。
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=======ここからはネタバレを含みます。読み進める際はご注意ください。==================
アニメを見終えて
アニメ版とマンガの試し読みをよんでみたが、絵が少し異なったテイストである気がした。アニメの方がキャラクターの目がキリっとしていて。なんというか『監獄学園』に近い感じ。
はじめは上田麗奈さんがヒロイン役と知って驚いた。私の中では名脇役、というイメージだったので。それでもアニメを見ているとなんともミステリアスなシュカのイメージを存分に醸し出していた。
失った者たちの烏合の衆
要はひょんなことからダーウィンズゲームの世界に迷い込んだわけであるが、彼はそこで多くの命を失い、多くの命を奪ってきた。彼に残ったものは何なのであろうか。そしてそれは彼が失ってきたものに見合うものだったのだろうか。
おそらく彼が得たものは2つ。憎しみと家族(クラン)である。友人を無残に殺され、クランの仲間も惨殺された。人の命に賞金がかかる世界。リンクを通してこの世界に迷い込んでしまう無知な人たち。人間による弱肉強食の世界を終わらせることがアニメ本編終了後の要の決意であろう。
一方で彼は闘いを通して知り合った仲間たちとクラン "Sunset Ravens" を組織する。ここに集まるのはダーウィンズゲームで親を殺された娘。弟を失った兄、娘の治療費を手に入れるために戦う父親など、皆が何かしらを失った人たちである。皮肉なことにダーウィンズゲームが彼ら彼女らを終結させ新たな家族となった。このクランの目的は一つ、この惨劇を終わらせることである。
花屋という男
本アニメで私が特に好きなキャラクターが花屋である。彼は重い心臓病を患った娘の治療代を稼ぐために、高額賞金が手に入るダーウィンズゲームに自ら乗り込んだ男である。
彼は戦術家で植物を使ったトラップで相手を倒す。植物は動物よりも本当はしたたかで強い、そんなセリフから繰り出される多彩な技には魅了された。残念ながら彼は王(ワン)の手下に殺されてしまう。
花屋が特殊なのは、要たちが忌み嫌うダーウィンズゲームに自ら足を踏み入れたことである。「私の娘は重い病気でね・・・」。
残酷であってもゲームはゲーム。一応試合にはルールがある。相手を降参させるか、殺害するか、制限時間を逃げ切る、そうすれば勝ちである。一定のルールがある以上、ゲームは参加者によって正当化される。花屋も不本意ながら賞金の為にこのゲームに参加していた。ゲームに参加しない人からみればただの人殺し。しかし、ゲームの参加者は足を踏み入れた瞬間、その「規約」に同意したものとされ、社会の善悪に縛られない環境で闘うことになるのだ。
ここで問題となるのは、参加者が本当にゲームの「規約」に同意しているか、ということである。想像するに、要のようにフレンドからの依頼でゲームに入り込んだ人が多い。この点では自らリンクをクリックしたとしても、単なる興味本位での参加であり、本当にそのゲームをプレイしたいと考えているかは分からない。
さらにこのゲームは一度始めたらやめることができない。24時間365日、他のプレイヤーから命を狙われる。対戦を免除してもらうには現金換算できるポイントを支払わなければならない。これはプレイヤーの自己の判断による脱退を妨げている。明らかに問題のあるゲームである。
シュカについて
声優さんがすばらしい、ということは言うまでもないが、シュカも興味深いキャラクターである。彼女は父親をダーウィンズゲームで失くしている。はじめは復習のつもりで参加したが、次第に相手を倒すことに快感を得るようになる。さながら残酷な女王様である。無敗の女王としてプレイヤーから恐れられていた彼女であるが、リアルの世界でも孤独を感じていたのではないだろうか。自分を守ってくれる要に恋心を抱きながらも、クランという家族を手に入れて彼女は活き活きとしている。ゲームの世界が彼女の居場所となっているのだ。そんな彼女の「居場所」を要は壊そうとしている。少なからず複雑な気持ちを抱えているはずだ。
現代社会との親和性
この物語の世界観は現実世界とはかけ離れているが、根本では親和性があるように感じられる。それはスマートフォンを介した殺人が行われているということ。昨今では、ネットでの誹謗中傷が人を死に追いやることから、「親指の殺人」と海外で呼ばれている。皮肉なことにスマートフォンがなければダーウィンズゲームに巻き込まれることはない。科学の進歩で生活が豊かになった反面、その象徴とされるスマホが人生の落とし穴になっているのだ。これは現代でもいえるだろう。例えば、悪意のあるリンクを踏んでしまうこと、詐欺、ネットでの誹謗・中傷。ネットには様々な危険性が潜んでいる。見えないところで人を苦しめるのだから、ある意味ではダーウィンズゲームよりたちが悪いかもしれない。
種の起源
チャールズ・ダーウィンはその著書『種の起源』で生物の進化の法則を明らかにし、弱者が強者に淘汰される、適者生存の原理を説いた。本アニメではどうか。
ダーウィンズゲームの世界では、迷い込んだ弱者を強者が喰っていく、という弱肉強食の構図となっている。この世界では絶えず闘いが行われるので、人類全体でみると、人間の個体数は減少していくと考えられる。強者は多額の賞金を手に入れるが、人間社会全体で考えると大きな損失である、といえるだろう。それは人間の個体数が減少するからである。
強者の遺伝子、優勢遺伝子なるものが受け継がれれば社会はよりよくなる、そんなことが強者の口から語られそうだが、それは間違っている。人間は社会的動物である。あらゆる分野において強者、弱者が存在し、それぞれがそれぞれの強みの分野で生きている。個人に総合的な点数をつければ優劣がつくだろうが、(実際にこれが行われている国があるが)それも数えられるほどの項目による査定でしかなく、人間の本性を測る物差しにはならない。そもそも人間を測る絶対的なものさしなど存在しない、というのが私の持論であるが、それは論旨が異なるのでここではよしておこう。
社会的動物である人間はその数を伸ばすことで豊かになってきた。もともと一人ではひ弱な人間は集団で狩りをすることで狩猟時代を生き延びてきた。ダーウィンズゲームの行きつく先はどこか。最終的には最後の一人になるまで傷つけあうのではないだろうか。よりよい世界などただの幻想である。ダーウィンズゲームの行きつく先は人類滅亡である。
最後に
人間の残酷な一面を浮かび上がらせる物語であったが、そのなかで要が憎悪を募らせ、積極的になっていく姿が印象的だった。本音と建て前は時として入れ替わる。彼が後に身を滅ぼさないことを願う。
今日の一曲♪
"Alive" (歌:綾野ましろ 作詞: A-NOTO 作曲: A-NOTO・S-TONE) (2020)
本アニメのエンディング曲であり、勝ち確定ソングでもある。思えばこの歌の歌詞がこのアニメのメッセージを直球で示しているのかもしれない。
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
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