『夢追い人~別の夢、別の夏』第1章 それぞれの夢② | 文化系寄り道倶楽部

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アラフォーで2児のパパであり、80年代の音楽をこよなく愛し、ガンプラを愛で、パソコンをいじくり倒し、台所を妻から奪い取り、キングの小説におびえ、究極超人あ~るで笑いころげ、夜な夜なUST配信をしている

 前回はモノクロの夢を見る男の話。彼に起きた異変はモノクロの夢がカラーになったこと。そして悪夢。そして今回はカラーの夢を見る女の話。男とは逆に彼女の夢は色を失う。

ワタシは幼い頃から色つきの夢を見ていました。だから、モノクロの夢を見る人がいると聞いたとき、かなり驚きました。その引っ掛かりがずっとワタシにはあります。

いったいモノクロの夢ってどんな感じなんだろう
まぁ、幼少の頃は白黒テレビを見てましたので、なんとなく想像ができますが、モノクロの夢を見る人は映像的に色がなくても、情報として「このバラは赤いバラだ」というのがわかるそうです
それってなんか不思議な感じ。

人は日常の中で当たり前のことを当たり前にこなしているけど、たとえば急に夢に色が着いたり、逆にモノクロになったりしたら、きっとそれは何か不吉なことの前兆だと思うのかもしれません

或いは吉兆か?

ただ、どちらにせよ、確かなことは、そのことがわかるまでは『不安』になるということではないでしょうか?

あなたには何か不安に思うことありませんか?
急に変な夢を続けて見るようになったとか……



第1章 それぞれの夢

②色つきの夢



 絵を描くのが好きだった。内気なわたしは、本を読んだり、漫画を見たりするのが好きだった。自分にはとてもできないようなことをやってのける、闊達な主人公が活躍するような物語を好んで読んでいた。わたしは妹のようにはなれない。中流家庭に生まれ育ったわたしたち姉妹。だけど性格はぜんぜん違う。でも、それだけじゃない。わたしは望まれて生まれてきたわけではない。そもそもそこが、妹とは違う。

 できちゃった結婚。ありがちな話だが、実際にそんなことを親戚から遠まわしに聞かされると、正直こたえた。なれない子育てに苦しんだ母は、ちょっとした育児ノイローゼになっていたのだと、伯母から効かされていた。「だから、最初は大変だったんだから。初めてだから、まぁ、仕方がないし、できちゃった結婚だったからねぇ。結局お父さんとお母さん、新婚旅行にはいけなかったのよ」

 そんなことを聞かされても、わたしにはどうすることもできない。わたしはただただ、両親に感謝し、そして申し訳なく思うしかなかった。『わたしのせいなんだ』なにか、うまく行かないことがあると、わたしはまず、自分の何がいけなかったのかを考える。何がよかったかなんて、考えたことはない。『わたしが見る世界と、妹が見る世界は別のものに違いない』そう思うに足りる過去の出来事なら、今から10や20はすぐにあげられる。たとえば――そうなのだ。だからわたしはダメなんだ。

 いい思い出が何もなかった高校を卒業し、横浜の短大に進学した。東京の親元を離れ、横浜での生活。わたしの人生は180度変わった。テニスやスキーを楽しむサークルに入り、合コンで知り合った男の子と馬鹿騒ぎをして、羽目をはずして――それでわたしは、女になった。友達の誘いでいったライブハウス。ボーカルの子もかっこよかったけど、一心不乱にベースを弾く彼に恋をして、そして付き合った。彼にはわたしなんかにはない、大きな夢、実現可能な夢があった。わたしは彼が夢に向かって走っていく姿を見るのが好きだった。

 でも、幸せな時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。就職活動の時期になると、それまで一緒に遊んでいた女友達はしっかりスーツを決めて、まるで「私、まじめな女子大生です。遊びなんか知りません」と顔に化粧で書いてしおらしさとしたたかさを武器に大手の企業へと訪問していった。わたしは――わたしはそこまで器用になれなかった。わたしも彼みたいに、好きなことを見つけてそれを仕事にするんだ。

 絵を描くのは好きだったし、それなりに勉強もした。当時インターネットが急速に普及していって、WEBデザイナーという職業が求人広告に目立つようになり始めていた。だからわたしは、彼が夢を追いかけて実現しようとしているように、わたしもそうなりたかった――もう、あの頃のわたしじゃない。

 でも、どこかで何かが狂ってしまった。一度かみ合わなくなった歯車は、二度と戻りはしなかった。

『やっぱり わたしが いけないんだ』

 夢なんか、夢なんか見るから辛くなる。現実が色あせた人生に戻ってしまうと、わたしの見る夢ときたら、まるで少女時代に逆戻り。現実が辛ければ辛いほど、夢の中のわたしの人生は色あでやかになっていく。典型的な現実逃避だということは誰の目から見ても明らか。

 ところがある日を堺に……具体的な日付は覚えてないけど、わたしの夢にある変化が起きた。夢の中まで色を失ってしまった。わたしの唯一の逃げ場だった色鮮やかな夢――その夢に色が消えてしまった。しかもそれは、とてもとても恐ろしいシチュエーションの夢――それは悪夢といっていいもの、いや悪夢そのものだった。

 悪夢――それはつまり、うなされるような酷い夢、怖い夢、悲しい夢、辛い夢、苦しい夢。わたしの短い25年の人生で悪夢なんて数えるほどしか見たことないのに。誰かに追われている。わたしは命の危険を感じて必死で逃げている。助けを呼んでも誰もきてくれない。ここは……どこ?暗くてよくわからない。わたし、いったいここで何をしていたの?全く見覚えのない場所。そしてなんともいえない違和感。何かがおかしい。でも、早く逃げないと、早く逃げないと――『殺される』

 でもダメ。とうとうわたしはわたしを殺そうとしている誰かに追い詰められ、死を覚悟する。そして次の瞬間――誰かがわたしを殺すところをわたしは別の場所から眺めている。いや、「わたし」ではない、「誰か?」に変わっているような不思議な感覚。

 いったいどうしてこんな夢をみるんだ。わたし、誰かに殺されるようなそんなこと身に覚えがないのに。

 なんとも目覚めの悪い夢。そしてすぐに気がついた。

 そういえば、あれはただ暗いのではない……色が消えている。一体どんな場所なのか?どんな人がわたしを殺そうとしているのか、思い出せない。でも多分あれは……男の人?

 思い出そうとしてもあまり具体的なディティールがはっきりしない。自分自身の感情の起伏が激しく揺さぶられ、異様な興奮状態で目が覚めている。誰かに殺されると死を覚悟したとき、人はこんな状態になるというの?

 わからない

「いったいなんなの。全然思い出せないのに、何なんだろう。嫌だわこの感じ……吐きそう」

 わたしはわたしの身に起きていることの重大さにまだ、全く気付いていなかった。そう、覚えてないけど、ある日を堺に、わたしの夢の世界に異変が起きていた。


つづく