小説を書いてみた 「蟲」第17章 完結 | 文化系寄り道倶楽部

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アラフォーで2児のパパであり、80年代の音楽をこよなく愛し、ガンプラを愛で、パソコンをいじくり倒し、台所を妻から奪い取り、キングの小説におびえ、究極超人あ~るで笑いころげ、夜な夜なUST配信をしている

人は文明を手に入れ、闇に潜む猛勇や命を脅かすような外的、時にそれは人間同士の争いもあるが、様々な方法で恐怖に対抗してきた

物理的な外的との闘いは、大きな成果を得、人は今ではより内面の恐怖に対抗することに日々恐々としている。。。それは時にはストレスであったり、強迫観念であったり、トラウマであったり。。。10人いれば10人の、100人いれば100人の恐怖があり、それに対抗する手段も様々だ

ボクの恐怖をアナタが解決できないように、アナタの恐怖をワタシが解決してあげることは、たぶん、できないと思う。。。ただ、ワタシが願うのは、あの時ボクは恐怖に対抗すべき手段を見つけることができたのは、決してラッキーだったからでも運命や定めといった特別なものではなく、恐怖に打ち勝とうと思ったことと、恐怖の正体に正面から向かったことで、切り抜けることができた。。。それは何年、何百年、何千年と人類が営んできた生きる、生き抜くということへの純粋な欲求からであると確信する

恐怖には勝てる

大事なことは、その恐怖の正体をきっちりと見極めることなのだ


題:蟲 作者:めけめけ

第17章 対決

なんとなくすっきりとした気分だったボクは、家に帰るなり、すっかり元気をなくしていた

家に帰り、父や母が変えるまでに洗濯物を取り込むこと、米を研ぐこと、茶碗を洗うことはボクと弟の仕事だった。。。今日は荒いものは弟。。。ボクは洗濯物を取り込もうとした

夕方の陽射しはオレンジ色が少しくすんでいて、目にはいても痛くはない。。。ボクらの住む場所は西向きで夕方の陽射しはもろに部屋に入ってくる。。。ベランダに干してある洗濯物で厄介なのは、シーツやタオルケットで、地面に引きずらないように注意しなければならない。。。ボクらの身長にはちょっとあまるのだ

ボクは夕べ悪夢にうなされ、汗でびしょびしょになった藤模様のタオルケットを取り込もうとして、一瞬息が止まった

食い荒らされている。。。ヤツらに。。。藤の葉が。。。食い荒らされている。。。あれは、悪い夢ではなかったのか


ボクは母が変えるなり、タオルケットが大変なことになっていると見せた

あー、これねー、間違って漂白剤こぼしちゃって、あらあら、やっぱりだいぶ色が抜けちゃったわねー

そーか、そうなのか?

はたして、本当に、そうなのか?

これは、ヤツらの仕業じゃないのか?

ボクは確信した。。。まだだ、まだ、終わってないんだ


その夜、ボクは部屋の明かりが消されみんなが寝静まるまで、タオルケットのなかでじっと待っていた

きっと来る

きっと


やがて沈黙の音がボクの耳の中でキーンと響き始め、冷蔵庫は深夜の宴を初め、時計はカチカチカチからチカチカチカに変わったとき、ボクはタオルケットから首を出し、天井を眺めた

天井には何かシミのような、模様のようなものが、少しだけうごめいたような。。。

同じだ。。。ヤツらが来る

でも、ボクは、大丈夫。。。ガムテープなんか使わなくたって、ボクは大丈夫


ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ

きた

天井のシミはヤツラの姿に代わって行った

大丈夫、ボクにはできる

ボクは、必死に念じた

ボクにはできる。。。蜂、足長バチ、足長バチは毛虫をやっつける

ボクは公園でみた足長バチの姿を必死で思い出していた

黄色と黒の縞々の。。。ブーンと音がするばね。。。三角の頭、鋭いキバ、長い足。。。

コワイ、コワイ、コワイ

ガムテープ、ガムテープ、ガムテープ


いらない、ガムテープはいらない

もうボクにはいらない

黄色と黒の縞々の。。。ブーンと音がするばね。。。三角の頭、鋭いキバ、長い足。。。目は、目は、大きくて。。。長い触角

ヤメロー、ヤメロー、ヤメロー

部屋の窓の隙間から。。。そう、換気扇の隙間からだって入ってこれる。。。黄色くて、黒くて、縞々で、お尻が大きくて、羽は、羽は茶色で。。。三角の頭、長い触角、大きい目、鋭いキバ、ブーンと音が。。。

ブーン

それは暗がりの中で、どこからともなく聞こえてきた。。。蜂の、足長バチの羽音。。。そうだ、そこだ、あそこにいるんだ。。。毛虫が!

黒いシミははっきりとしたチャドクガの幼虫の形になったようにみえた。。。それが恨めしそうにボクをにらんでいる。。。いまにもボクに飛び掛りそうな感じがしたけど、ボクには次のイメージが見えていた。。。身体を振り子のようにしてボクの顔めがけて跳躍しようとしている毛虫を足長バチが鋭い牙で噛み付き、どこか闇の中に持ち去る姿を


いまだ!行け!

それは目にも留まらぬ速さで、ボクの視界を横切り、天井めがけて飛んでいった

ボクの全身にわさわさとした感覚がよみがえり、一瞬ボクの顔めがけて、毛虫が跳躍したようにみえたが、足長バチは毛虫を取られ、闇のかなたに姿を消した


翌朝、ボクはすっきりとした目覚めの中で、昨日の夜のこと、そして、今日までおきた一連の出来事を振り返った。。。やっぱり、桜堂にあやまらないといけない

ボクはヤマンバに自然といえた「ありがとう」の言葉とこれから言わなければならない「ごめんなさい」の言葉が、開けてはならない扉を再び施錠するためのカギであることになんとなく気付いていたのかもしれない


終章


恐怖は誰にでもある
でも、それに打ち勝つことのできる力を、誰もが持っているのだとワタシは思う

小学校5年生のボクは成長し、自立し、妻と出会い、子を授かり、育てている

息子は小学校2年生になるが、今、まさに恐怖を抱えているようだ

パパ。。。あっちの部屋に寝るとね。。。シーーーンって音がするから眠れないよ

娘は小学校4年生、時々夜中に泣きながらワタシを起こす。。。怖い夢を見たの。。。街にね、ひとりで。。。パパもママもいたのに、いつの間にかひとりで。。。そしたらね、ゾンビみたいのが追いかけてくるの


娘や息子はどうやってこれらの恐怖の打ち勝っていくだろうか
ワタシが闇の中に存在を確認した恐怖は今でも私たちのわまりに潜んでいる
ワタシの家の中にも、アナタのそばにも、アナタの近しい人にも

どうか恐怖に怯える人たちにアシナガバチが現れますように

もし、アナタが本当の恐怖の正体がわからず、アシナガバチに出会うことができなければ、そのときは



「アナタ」はただ、身を震わす思いで、それに耐えなければならない



おわり