小説を書いてみた 「蟲」第9章 | 文化系寄り道倶楽部

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アラフォーで2児のパパであり、80年代の音楽をこよなく愛し、ガンプラを愛で、パソコンをいじくり倒し、台所を妻から奪い取り、キングの小説におびえ、究極超人あ~るで笑いころげ、夜な夜なUST配信をしている

怖い夢を見た日の朝というのは、いつもより日差しが輝いて見える。。。暗くよどんだ空間から抜け出して、さわやかな空気のながれる場所に出たとき、ひとは今までにない安息を感じることができるかもしれない。。。だけど、目覚めたとき、空は厚い雲に覆われ、湿った空気が肌にまとわりつくような天気だったら、それは夕べの悪夢は予兆で、これからもっと悪いことが起きるにちがいうないと思うだろう
実際、あの日のボクは、できることなら学校に行きたくない気分だった


題:蟲 作者:めけめけ

第9章 暗転


結局ボクは、タオルケットに包まって息苦しい一晩を過ごし、いまにも雨が降り出しそうな空を恨めしそうに見上げながら、学校へ行くことになった

それにしても、これから毎日がこんなかんじなのか。。。あの桜堂の前を通り過ぎるたびに、あの店主のしわしわの笑顔をみるたびに。。。あの細く垂れ下がった目の奥に、決して笑っていない瞳を感じなければならないのか

教室に入ると、Uが足に包帯を巻いているのに気づく、よっぽど傷の具合が悪いのだろうか

どう?

うん、大丈夫。。。なんかばい菌が入ったみたいで、ゲロゲロになってるけど

気がつくとOやSも集まっていた

なにもなかった?

Oが意外なことをボクにたずねて来た

え?

Sと朝来るとき話したんだけど、オレ、あれから家に帰るのに2回くらい車に引かれそうになったよ
Sも帰り道に霊柩車をみたって?

あのころボクらのなかでは霊柩車は不吉な存在で、それをみたら親指を隠さないと、身内に不幸が訪れると本気で信じていた。。。あんなことがあった日に霊柩車をみるというのは、それはそれは不吉なことである


お前ちゃんと、親指かくしたのかよ

UがSにきく

それがさぁ、あまりに急だったんで、隠せなかったんだよ

Sはとてい陰鬱な表情をしていた

これって、やっぱり昨日の。。。

OがUの足の包帯を見ながらつぶやいた

そんなのただの偶然だよ。。。だってオレ、なにもなかったし

ボクは嘘をついた

授業が始まっても、ボクは、ボクらはどこかうつろな気分だった

放課後、ボクらは学校のウラに。。。焼却炉が気になって様子を見に行った

焼却炉は白い煙を上げている。。。周りにはだれもいない

ボクらはあの忌々しい毛虫がいまでも生きているのではという不安が払拭されたことに少し安心したが、焼却炉にわきに、途中まで使ってあるガムテープを見たときに、言い知れぬ不安を覚えた

なぁ、あれ、やばくないか?

もしかしたら、ばれるかもしれないよ

OとUは小さな声を震わせながら、すっかり怯えている様子だった

どうしよう、今なら誰もいないし、あれ、もってかえってどっかに隠しちゃおうよ

Uはあのことが親にばれるのはとても恐れていた

Uの親はPTAの会長である。。。その息子が学校のそばの文房具屋の倉庫からガムテープを盗み出したことがわかれば、それは想像できないほど恐ろしいことになるだろう

ボクらの行動は早かった。。。ガムテープをそれぞれひとつずつもち、かばんに無理やり入れると、一目散に学校の校門まで走っていった

もはやボクらのうしろめたさは、くるところまできていた。。。みんなが分かれる十字路でボクらは立ち止まり、じゃぁ、うまく、やれよと0の言葉でみんな分かれた

ボクは帰りみち、車に注意しながら、そして霊柩車がいつ通っても大丈夫なように親指を手の平に握りこみながら、家路についた。。。隠すところはどこにでもある。。。ボクの家は工場の寮で、大人が知らない四角には事欠かない

ボクは一番の隠し場所とおもわれる工場の廃材置き場へと入っていった。。。ちょっとした空き地で焼却炉や使わなくなった壊れた重機の部品などが無造作においてあり、雑草がひざあたりまで生い茂っていた。

ボクはここで宝物を見つけては、大人たちに見つからないように隠すことに成功していたし、ここはボクがいて当たり前の場所。。。すっかり遊び場になっており、いくつかの注意事項。。。やっかいごとを起こさなければ注意されることはなかった

でも、その日、いつもなら気にならない風景がボクには特別なことに見えてしまった

雑草の中に足を踏み入れた瞬間、ボクの足に絡みつく雑草の感触は、毛虫の存在を容易に想像させ、ボクの注意は必然最大限に高められた。。。この季節、雑草の中に毛虫を目にすることは普通だし、毛虫が食べた葉のあとを見つけるのはさらに簡単なことである。。。1分、いや30秒も立たないうちに、ボクはそれをみつけてしまった

だめだ、ここもやられている

ボクはすっかり毛虫に自分の居場所を食べあらされている気分になっていた。。。帰ろう。。。家の中にもいくらでも隠し場所はある


ボクは後ろめたい気持ちと、それを象徴するガムテープを自分の家に持ち込んでしまった
今にして思えば、ガムテープをあの場所に投げ捨てるだけでよかったと思う。。。だけどあの日のボクには。。。いや、その前の日から、ボクには選択肢が狭められていたんだ。。。あの日のボクに、ほかに何ができたというのか。。。ボクはすでに扉を開けてしまっているのだから


つづく


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