小説を書いてみた 「蟲」第8章 | 文化系寄り道倶楽部

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アラフォーで2児のパパであり、80年代の音楽をこよなく愛し、ガンプラを愛で、パソコンをいじくり倒し、台所を妻から奪い取り、キングの小説におびえ、究極超人あ~るで笑いころげ、夜な夜なUST配信をしている

覚醒。。。それまで眠っていた能力が「何らかの要因」によって活性化し、能力に目覚めること
人の能力は、現代の日常生活において「不要なもの」に対して制限=リミッターが仕掛けてあり、人体及び精神に負担がかからないようになっている

人は生命の危機や激しい喜怒哀楽によって、意識的、或いは無意識にリミッターを解除することで、「驚くべき力」を発揮したり、「想像もつかない能力」を使ったりすることがある

極度な精神の緊張状態によって、五感を研ぎ澄ましていく作業は、運動系アスリートや演奏者や演技者などの表現者によく見られる

方法はいろいろあるが、用ははるか10キロ先の出来事が音や匂いや視力によって感じられるほどの集中力をどう引き出すかということである

そして、もっとも人間がその能力を発揮できるシチュエーションとは「恐怖」に対抗しようとしたときではないだろうか?


題:蟲 作者:めけめけ

第8章 感触


あれは、あれは、あのとき、あそこに、あったんだ

散文的ではあるが、それは確実な一つの結論「存在」という立証を得たわけだ
存在が立証され、次にはこの疑問を解決しなければならない


あれは、なんだ?


しかし、ボクの優先順位はそこではない

あれはなんでもかまわない。。。まず、大事なことは、ボクのスネの上。。。ありがたいことにそれは、素足ではなく、寝巻きと薄手のタオルケットの上であり、たとえそれが、「よくないもの」であっても、ボクはタオルケットを跳ね除けることで、今の状況からは脱することができる。。。しかし、同時に、それが何であるか?を確認する術がなくなる可能性を意味していた

あれは逃げてしまうかもしれない、そして、どこかボクの死角に潜み、ボクは眠れない夜を迎えることとなる

ボクは、今、ヤツをこの目でみて「なんであるか」を確認しなければならない

ボクは恐る恐る、顔を起こして、あれがおちてきたあたりを覗き込もうとした、慎重に、足が動かないように、ヤツに気取られないように。。。そーっと、そーっと。。。

夜は真っ暗にはしていない。。。豆電球がついているので、オレンジ色のぼんやりとした明かりに照らされ、それは見えるはずだった

しかしどんなに目を凝らしても、そこには何もない。。。それらしき姿が見えないのだ。。。タオルケットは白地に藤の花の模様が描かれており、黒いものが底にあれば、こんな薄明かりの中でも十分に識別できるはずである。

にもかかわらず、それは「そこにはいなかった」。。。そう、そこに居ないというだけで、「そこに居たはず」である。すでにそこから動き出し、どこか「ボクの死角」に逃げ失せたのか。。。いや、そもそも「あれ」は、一度はボクの視界から消えて見せて、そして時計をみた一瞬後にあらわれて、ボクの足元に落ちてきた

ボタン!というよりはポタン!という感じで、質量はさほどないものである。。。まるで虫のような


まるで虫?

ゴキか?


ゴキブリはいやだけど、まぁ、やつなら堕ちたようにみえてボクの死角で飛んだのかもしれない。。。そういう経験がないわけではないが、それはそれで、あまり気持ちのいいものではないが、まぁ、それなら、別に噛み付くわけでも刺すわけでもない、ただ、ゴソゴソと気持ちが悪いだけだ

時計に目をやると、時間はたったの2分しか過ぎていなかった。。。ボクには少なくとも5分はたっており、感覚的には7~8分だたので、5分前後だと冷静な予測を立てていた

ボクはそれがゴキブリだと決め付け、タオルケットを足で思い切り上に向かって蹴飛ばし、身体を起き上がらせて、あたりを見回した


そこには横で寝ている弟や妹、父と母の姿があるだけで、時計の音以外は何もしない、静寂した闇の水面からボクの上半身だけがでて、ボクを中心に輪っかになって漣が広がっていった

その漣に気付いたのか、母が僕に向かって寝返りをうち「もう寝なさい」とささやいてくれた

うん。。。なんか、ゴキブリがいたような気がして

。。。寝なさい


母は再びボクの反対側に寝返りをうって、寝てしまった

でも、ボクには少しだけ安心感がもどった

先ほどまで静寂の中で「きぃーーん」と聞こえていた音は静まり返り、時計の音もどこか遠くで聞こえている。。。もう寝よう


結局あれは、きっとゴキブリだったに違いない


ボクはタオルケットを頭から被り、眠りにつくことにした。。。もう天井を見上げるのはイヤだった


つづく

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