小説を書いてみた 「蟲」第6章 | 文化系寄り道倶楽部

文化系寄り道倶楽部

アラフォーで2児のパパであり、80年代の音楽をこよなく愛し、ガンプラを愛で、パソコンをいじくり倒し、台所を妻から奪い取り、キングの小説におびえ、究極超人あ~るで笑いころげ、夜な夜なUST配信をしている

恐怖にはいくつかの種類がある
現代の日本には恐怖に満ちているようで、実はかなり少なくなっている
人は生き物である以上、自分の存在が脅かされる場面では恐怖を感じ、そこから多くのことを学び取る
これはできるだけ長く生き残るために必要な生物としての恐怖であり、ケガであれ病気であれ老いであれ、自分が傷つき、死に近づくようなことには恐怖を感じ、それを回避する努力をすることで自らの遺伝情報を後世に残し、その情報を共有化すること、<言語><記録><理解>によって文明は発達していった

つまりは恐怖を克服することによって人はこの地球上に君臨したのである

死の恐怖から遠ざかることに成功した人類にとって、恐怖とは非日常的な体験になりつつある

しかし、どんなに文明が発展しようとも、人々が逃れられない恐怖。。。あの暗がりに潜むなにかおぞましいものの存在を考えずにはいられないという類の恐怖。。。人の想像による恐怖だ

この恐怖ももともとは死を察知するための機能であったことは容易に推察できる
太古においては、物陰に潜む夜行性の肉食獣から身を守るためには必要な機能であった

しかし、現代においてその機能はおおよそ用をなさない。。。用のなさない機能は時としてとんでもない誤動作を引き起こす。。。いるはずのないものをいるかのように錯覚し、そのようなものに恐れおののき、<言語><記録><理解>によってそれは多くの人に共有され、闇に潜む怪物を作り上げるのだ


その夜ボクはあたらしい怪物を作り上げてしまった

題:蟲 作者:めけめけ

第6章 闇からくるもの

怖いテレビや映画を見たとき、きまってボクは眠れなくなる
特にそれが闇に潜む怪物や幽霊の話であればなおさらである
東海道四谷怪談。。。ワタシは今でもあれを好きにはなれない。。。怖いのだ
強欲と裏切りの末路。。。主人公によって謀殺されたヒロインは幽霊となって主人公を追い詰めていく。。。ついに主人公は気が触れてしまい。。。
扉を開く、振り返る、主人公の死角から次々と襲い掛かる幽霊の演出に、まさしくボクはトイレにいけなくなるほど恐怖した

そしてあの日の夜も。。。



ボクは布団に入り、ぼんやり天井を眺めていると、なにか闇の中でうごめくものを見たような気がした

なんだろう?

よく見てみると、それは小さなシミのようで、木目の模様のようのようで、或いは、虫のようで

。。。虫?。。。ゴキブリか?

あるいは。。。毛虫。。。?


公園でUの背中から払い落としたあの毛虫。。。あれはボクをめがけて這っていた。。。それは間違いない。。。だいたい、毛虫に目があるのか?単なる偶然、たまたま進行方向にボクがいただけじゃないか、たまたま。。。そう、たまたま、Uの背中に、何かの拍子で木から落ちててきたんだろう。タダの偶然に決まっている

天井のいままでまったく気にならなかった小さな模様。。。いつからあったのか、全くわからないけど、でも、ボクは考えてしまった。。。あの公園で振り落とした毛虫が、いまここまで追いかけてきたのではないかという疑問。。。恐怖を

もはやボクにはその模様を無視することはできなくなってしまっている。瞬きをするたびに、少しだけボクの顔に向かって天井を移動しているように思えてしまう。。。

いや、実際少しずつ動いている。。。いや、それは錯覚だ。。。でも、ほら、こっちの木目と比べて、もう少し下のほうに、最初は見つけたんではなかったか。。。

いや、ちがう、そんなはっきりとは覚えてないし、ちゃんと位置を確認したりしてない、今、はその位置を正確に確認している。。。大丈夫動いていない。。。動いていないが、少しだけ、大きくなってやしないか?。。。うん、そんな気がする。。。

いや、そんなはずはない、だって、大きさを比べるようなものは周りにないから、それもただの錯覚。。。ほら、こーして手を伸ばして、自分の指の大きさと比べて。。。

うん、時間がたったらもう一度やってみればいい。。。きっと大きさはかわっていないさ


ボクは冷静だった。。。大丈夫、ボクは冷静だし、ちっとも怖くない。。。幽霊の正体なんて、だいたいそんなもの。。。UFOだって、ほとんど錯覚なんだ

目を閉じていたのは、多分1分にもみたなかったに違いないが、ボクの中では、それ以上の時間、たっぷりと事実を検証するのに足りる時間、目を閉じていた思っている


ボクはなんの恐れもなく、目を開けて、あの忌々しい模様の大きさを測ろうとした


だが、そこに、さっきまであったはずの模様はなくなっていた。。。まるで部屋の中の闇の中に溶け込んでしまったかのように、姿を消してしまっていた

ボクは、ボクは、ボクは


恐怖した



つづく


はじめから読む
第7章