小説を書いてみた 「蟲」第5章 | 文化系寄り道倶楽部

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アラフォーで2児のパパであり、80年代の音楽をこよなく愛し、ガンプラを愛で、パソコンをいじくり倒し、台所を妻から奪い取り、キングの小説におびえ、究極超人あ~るで笑いころげ、夜な夜なUST配信をしている

とっさのとき、人間のとりうる行動は、慌てふためいて、突拍子のないことをするか、なにもできないか

地震で飛び起きて枕を抱いて外に出るなんていうことはよくたとえ話であるけれど、それがもし、集団で出くわしたとき、1人がその場から急いで逃げ出したら、やっぱりみんなあとを追いかけるよね

あの日のボクらは、まさしくそんな状態だった。。。絵にかいたようなとはまさに、あのような出来事のことを言うのであろう

題:蟲 作者:めけめけ

第5章 視線

最初に駆け出したのは、Oだったか?それともUだったか
Sは驚いた拍子にボールを落としてしまいそれを拾うのに手間取った
ボクは先に走り出したOとUを目で追いながら、Sがボールを拾うのを待ってから、駆け出した

そのうち2番目を走っていたUが木の根元に足を引っ掛けて、見事に転倒した
いってーっ!

みると右のひざがすりむけて滴るほどに血が流れていた

Uは目に涙をいっぱい浮かべ、必死にこらえている
ボクらはいつも、無茶なことをしているので、ヒザをすりむくなんて、日常茶飯事だったが、これはやばかった。。。血が止まらない

これ、はやく消毒したほうがいいよ
Oが心配そうにUを覗き込む

バチが当たったんだよ
Sがボソッという

そんな、ボールを投げたからって。。。

そうじゃないよ
ボクの言葉をSがさえぎる

そのことじゃないよ。。。

みんなすっかり意気消沈してしまった

みんなわかっている
桜堂から「盗んだガムテープ」そしてそれで毛虫を「大量虐殺」したこと
罰が当たって当然である

今日は、もう、帰ろう

Uはもう涙をこらえられない状態だった
Uの方を抱えて起き上がらせると水道の所までいって、とりあえず傷口を洗い流した

ふと、傷を洗い流しているUの背中にうごめくものが目に入った

あっ

思わずボクは大きな声を出し、飛びよけた

ボクの視線の先には、毛虫が一匹、Uの背中を首筋めがけて這っているところだった

U、動くなよ

なに?

Uは見事に凍りついた

今取るから

ボクは小枝を拾ってUの背中を這う毛虫を払いのけた。。。毛虫はうねうねと地面をのた打ち回っている。。。Uは悲鳴を上げた

ぎぃぃいぃぃぃぃ、あぁぁぁぁ。。。

それはあのマンガのキャラクターをまねた擬音ではなく、彼の本気の悲鳴だった

ボクらはもはや、想像せざるを得ない

これは毛虫の復讐なのかと。。。

地面に落ちた毛虫は、まっすぐにボクに向かって這ってくる。。。ボクははじめて虫の視線を感じて背筋に震えを覚えた。。。怖い

そのとき突然、音楽が鳴り出した。。。七つの子。。。この地域で5時を知らせる時報として、公園などに設置してある緊急放送用のスピーカーからこの音楽が流れるのである

ボクらは毛虫をそのままに家路につくことにした

そしてその日の夜。。。ボクは生まれてはじめて恐怖を知ることとなる

この日、家に帰ってから布団に入るまでのことはほとんど覚えていない



つづく


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