わたしの趣味は、もしかして地方の有料老人ホーム巡りか。今年に入って、何回目かしれないほど訪ねている。相手には申し訳ないが、ちょっとした旅行気分で行けるので、取材好きな私としては、趣味と実益を兼ねた訪問なのでだ。 
 ああ、しかし、しかし、ひとり女性の老後の落ち着き先を決めるのは、そう簡単じゃなさそうだ。誰にとっても自宅がいいに決まっているが、いつまで自宅で一人暮らしが可能なのか、そのときの年齢、健康状態によって変わってくる。ああ、いつまでも元気ならいいが・・・でも生きすぎるのも嫌だし・・・・ああ、どうしたらいいの。
 確か、まだ、30代か40代のころだと思うが、「終いの棲家はどこにする」という連載を雑誌で持っていたことから、東京近郊のいろいろな形の終いの棲家を取材したことがある。そのときは、新築マンション見学のようで、完全に他人ごとだったので楽しかったが、わあお、今や自分のことになってきたのです。
 ある有料老人ホームを取材したときのことが忘れられない。40年も経った今でも覚えているのだから、そうとう響いたのだろう。所長はこう言ったのだ。入居者のほとんどが女性です。これは了解していることだったので驚かなかったが、そのあとに、こう言ったのだ。「ほとんどが独身女性です」
 つまり、初期の有料老人ホームというのは、お金はあるが家族のいない独身女性のために用意されていたと言っても過言ではないのだ。
 昨今は、ホテル並みの素敵な有料老人ホームもたくさん出来てきたが、建物や設備がよくても、そこは老人の世界。ああ、老いるって大変だ。