お越しくださりありがとうございます。

読書の秋。
食欲の秋。
どちらも満たしてくれる(であろう)作品
を読了いたしました♪



『極彩色の食卓』  みお 著

公園でぐったりしていたイケメンの大学生(訳あって休学中)が
一世を風靡した女流画家と出会うところから始まるこの物語。

親子以上に歳の離れた2人の同居生活が
たくさんのお料理とともに
しずかに、淡々と描かれています。

フレンチトースト、ナポリタン、
かぼちゃのスープに、オムライス。
食べ切れないほどのおせちに飽きたら
塩ラーメン。
炒飯、チリコンカン、ガトーショコラ。

お料理男子大学生、燕くんは
初めての挫折ともいえる壁にぶつかり、
胸に抱えた気持ちを誰にも言えずにいます。

生活を共にする律子さんは
絵を描きだすと、
空腹であることも、
食べることも忘れるほど
夢中になってしまう女流画家。

律子さんが
お腹へったよ!
何か作って!
とお願いする可愛いらしさ。

仕方ないなぁと思いながら
キッチンにたち、
そこにある食材を、あますことなく
そのとき、いちばん美味しく食べられるようにお料理する燕くん。

甘い葉巻の香りをさせる男性がもってくる
たくさんの食材や、
律子さんのお弟子さんから届く食材で、

燕くんの胸の内、律子さんの過去、
いろんなものが溶けこませて
出来上がるあたたかなお料理。

同居する2人の日々に季節がめぐり、
その時期の旬のものがたくさんでてきます。

お料理する描写からは
熱や湯気や、いい香りが漂ってきそう。

なんですが、
私は読んでる間
ずーっと色がイメージできなくて。
鉛筆だけのデッサンみたいな。
昔観たフランス映画みたいな感じだな、と。
きちんと文章に色が出てくるのに。

それが、
最後のあたりで、一気に色がつくんです。
「極彩色」になる瞬間があるんですよね。

このお話のどこで色がつくのか、
それは、読む人によって違うのかも…。
(それも、また楽しいですよね)

フレンチトーストから始まり
一番最後も、またフレンチトースト。
でも、あの日と同じではない作り方で。

お料理を作ることが
燕くんにとって、いいリハビリになったんじゃないかと思います。

お料理してるときって、
無心になれるもん。
なんていうか…ゾーンに入る。
だから、心がもつれたときは
お料理するのがいい!
あれ?
私だけかな??(笑)


凝ったものじゃなくていい。
家にあるもので、
出来たてのお料理を
誰かと食べたくなる、そんな作品です。