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風が冷たくなり、一気に秋になったと感じます。

世間では「読書の秋」…と言われますが

私は年がら年中、読書の季節です(笑)

 

ちょっとだけ読むつもりが、一気に読んでしまいました。

 

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『人魚の眠る家』  東野圭吾

 

「娘の小学校受験が終わったら離婚しましょう」

と決めて、別居している夫婦。

その娘が、プールでおぼれて

意識不明の重体になります。

駆け付けた病院で、医師に状態を説明された後

夫婦は、こう聞かれます。

 

「お嬢さんは臓器提供意思カードをお持ちでしょうか?」

あるいは、臓器移植や臓器提供について

親子で話し合ったことがあるか?と。

 

壊れてしまっていた夫婦が

我が子への選択を迫られることになり、

そこから、物語が始まります。

 

母親である妻は、

娘を守ろうと必死です。

父親である夫も、

彼ができうることで、娘や妻を守ってやりたいと思う。

 

ただ、母親って強くもあり、一途でもあり

そして、愛情が深すぎるがゆえに

それが執念にもなって、

自分自身や周りをもしばりつけていってしまう。

 

母親として、わかる部分もあるし

それはやり過ぎじゃないのか…?

という冷静な第三者的目線になったり、

読んでいる私も揺れました。

 

 

脳死、臓器提供(特に子供の場合)、

提供する側、提供を待つ側、

臓器移植の現実など、

現段階の法律を踏まえて、

かなり詳しく書かれています。

 

きっと、その法律に書かれたものや

ガイドブックを読んでも、理解しづらいと思うのですが

「小説」という形の中で

登場人物が、その状況になって、

セリフとして、描かれていると

ただの法律ではなくて

この国に生きている私たち、みんなに当てはまるものなんだ

と急に身近に迫ってくるように思えます。

 

夫婦としての目線から、

母親からの目線の中盤。

手を差し伸べるのは、誰のためなのか。

娘の事だけを考えていたはずが、

いつの間にか自己満足になっているのでは

という周りの反応から

後半、

母親の鬼気迫るシーンが圧巻。

愛情と執着の紙一重。

それが現れているシーンだと思います。

 

プロローグが、ラスト近くに重ねられて

エピローグへとつながります。

 

ふんわりと優しいバラの香りをかぐと

この物語を思い出してしまいそう。

 

東野作品は「ガリレオ」しか読んだ事ない

って方にも、ぜひ読んでみてほしい1冊です。