ティクセ・ゴンパからバイクでさらに南に30分。深い谷間に、ヘミス僧院は静かに佇んでいる。








最初に気づいたのは、窓の配置だった。

広場こそ四角く整えられているものの、窓の配置には規則性が全く見えない。


建築を学んでいるせいで、ファサードを見るとき無意識に対称性を探してしまった。


タージマハルも、ムガルの城塞も、インドで見てきた建築はどれも恐ろしいほど左右対称だった。だからこそここで、何かが強く引っかかった。


その外観をスケッチを起こした。T字型のシルエットをもつ窓が生む、不規則な独特のリズム。




その「でたらめさ」がかえってポストモダン建築に通じるものを感じる。





まさにヴァナキュラー(風土的な)建築。


あまりの奥地でイスラム勢力の破壊を免れたこの僧院は、中庭を中心に閉鎖的な空間構成を持つドゥクパ派の聖域であり、現在も修行の場らしい








この非対称性は、必要に応じて成長するように増築を繰り返してきた結果だと考えられる。厳しい環境と独自の死生観の中で、建築は永続的な完成体ではなく、絶えず変化し続ける前提として捉えられているのかもしれない。




あの不規則なリズムは、建築に生命力のようなものを与えていた。

完成した瞬間に止まる建築と、完成しないことで生き続ける建築。ヘミス僧院の窓を眺めながら、自分が今まで前者しか見ていなかったことに気づいた。