私は今も夢の中でも彼を探している。
会えた時は涙を流しながら起きる。でも夢の中で携帯の番号とアドレスを交換しても、現実には無い。
そして私は神様に祈る。
「お願いします。もう一度だけ、一度だけでいいから彼に会いたい」
10年間祈っても神様は知らんぷり。だってそんなものいないもの。
だから願いなど届くはずもないの…。

10年前突然切れた彼との糸。今の時代、一人一台の携帯電話。だけど、番号やアドレスを消してしまえばそれでさようなら。
なんて簡単で薄っぺらい友情や恋愛だろう。
ましてや共通の友人が居なければ、もう二度と繋がらない。もう二度と会えない。
それをわかっていたはずなのに、少しの口喧嘩が原因でカッとなった私は、繋がっていた糸を自分で切ってしまった。
最初のうちは平気だった。仕事も忙しかったし、毎日のように朝まで友達と遊んでいたのだから。
その時は彼の番号やアドレスを消したことすら忘れていたくらいだった。

そのうちにフッと声が聞きたくなった時、私は死ぬほど後悔した。
リダイアルもメール履歴も何一つ残っていなかった。それからの私は街を歩いていても、何処にいても自然と彼を探すようになっていた。まるでインフルエンザの時の高熱にうなされるかのように。
もう一人の自分と話し合ったら落ち着いてきた。

もう誰も傷つけないで生きてゆきたい。
出来ることならもう傷つかずひっそりと暮らしてゆきたい。

けれど狭い箱の中に詰められて監視される毎日が辛いから、真っ青な空に浮かぶ白い雲になって流れてゆきたい。

ふわふわと。
どこまでも。
知らない場所へ。