のらねこ日記 ~ けもの道の困惑 ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

 

おばあちゃんちの解体工事を請け負っていたのは50代の女社長で

彼女が率いる従業員はアフリカ人たちだ

 

狭い道のてっぺんから入れる分だけ、どうにかトラックを後ろ向きに突っ込んでいるので

私は身体を横にしてその隙間を何とか体すり抜ける感じで通るのだが

 

その度に女社長は 「すみませんね」

アフリカ人従業員は 「きを つけてね」

と声を掛けてくれる

 

そのうち魔女の姿を見ると

女社長は、解体が怖くて遠巻きに待ち受けるけもの道軍団に向かって

「みんな ごはんが来たよーー!  よかったねー!」 と声を掛けるようになっていた

 

そうして昨日、解体工事は完了した

 

 

今朝

 

さき 「まじょ・・」

 

魔女 「《さきちゃん》」

 

さき 「こっち きて」

 

 

さき 「みて・・」

 

 

さき 「あたしたちの すむとこ なくなった・・」

 

 

さき 「なんにも ないよ」

 

 

さき 「どうして  こんな なっちゃったの・・」

 

 

大きな銀杏の木も伐採され、なにもなくなった庭には

その隅っこに一鉢の花だけが残されていた

 

 

そこに繋がる階段横の雑草は血に染まったように赤くなっていて

 

傷心の《さき》を抱いて私は佇み

 

「がんばるんだよ まじょがついてるからね」

 

無垢な瞳で見つめる《さき》に

それしか言えない自分がたまらなく嫌で・・

 

 

 

暫く《さき》を抱いて跡形もない地面をふたりで見詰めて

やってきた《おひとりさま》に《さき》を頼んで立ち上がる

 

《さき》、ちゃんとあそこの小屋で寝なさいね

 

そうして向かった丘のてっぺんでは《ぐれ》が待っていた

 

 

ぐれ 「まじょ・・」

 

 

ぐれ 「すむとこ なくなった・・」

 

 

ぐれ 「どうしょう 汗汗汗

 

魔女 「なかないで 《ぐれ》・・」

 

ぐれ 「だって・・」

 

魔女 「ねこすておやじんち あたりに ねこの なかまには なれなかったの?」

 

ぐれ 「なれたよ  だけど やっぱ ぼくの すむとこは あそこだもん汗

 

魔女 「《ぐれ》、きょうから だいぼうけんを するんだ」

 

ぐれ 「だいぼうけん?」

 

魔女 「そう、あんぜんで いいかんじの ねるとこさがしの ぼうけん」

 

ぐれ 「それは あの おにわでしょ」

 

魔女 「あそこじゃないところをさがすの わかるでしょ」

 

ぐれ 「・・」

 

 

そう言って《ぐれ》をいっぱい撫でて

いろんなお話をして 「また あしたね」

 

家に向かって坂道を下り、降り切ったところで《ぐれ》が心配で振り返った

《ぐれ》は坂のてっぺんに座ってじっとこちらを見ていた

 

そこまでが《ぐれ》のエリア

豆粒のように見える《ぐれ》が見てる

 

魔女が振り返ったのがいけなかったんだね

堪りかねたように《ぐれ》が駆けだした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐれ 「まじょ いかないで   いっしょに いてよ」

 

 

ぐれ 「汗汗

 

 

《ぐれ》のエリアはおばあちゃんちの庭と、その周り数メートルほどで

 

生まれて初めて自分のエリアを出て

こんなところまで懸命に追いかけてきた子

 

ここは他所の猫たちの縄張り

魔女は《ぐれ》を連れて今来た道を戻る

 

《ぐれ》のエリアに入った丘のてっぺんで

《ぐれ》を抱いて言い聞かせる

 

 

居場所を失った困惑

今後の生活への不安

 

私は《ぐれ》を抱いて

ただ見守るしかない自分を不甲斐なく思う

 

《さき》も《ぐれ》も、そして《かーら》も、魔女は信じているから

あなたたちは強い子だって

 

なんたってのらさんなんだもの

 

最後は魔女がいる

どうにもならなくなったらいいなさい

 

それまではみんな、知恵を尽くして頑張るんだよ