昨日は仕事で忙しく、私はヘトヘトだった
軍団の夕食後、少しだけ時間の取れた夕暮れに
魔女はテラスから空を眺めていた
遠くの雲は動かず
手前の雲は北に向かって速度を増して流れていた
私はそこで
意識を失くした小さな《インドラ》をこの手に抱き上げた５年前の日を想い
そして
その美しい命が止まっていた、４ヶ月半前のあの日のこと・・
冷たくなった《インドラ》を抱き上げた時に
アクアマリンの瞳から零れた水晶のように美しく清らかに朝日に輝いていた涙
私はその涙の意味を、いつも、いつも、心に抱えていて・・
空を見上げる魔女の目から涙が溢れてきた
俯いて涙を拭い
再び顔をあげると
そこには
虹が出ていた
それは突然、
俯いて涙を拭いていた短い間に現れた
虹は伸び始め
夕暮れの空に大きなアーチを描いた
そうして
虹の端にはもうひとつの虹が姿を現わした
私は虹を見詰め続けたけれども
暫くして虹は消えてゆき
そうして北の空に目を移すと、美しい夕焼けの空があって
そのまま西の空を振り返ると
そこには燃える炎のような雲が広がっていた
前にも書いたけど
虹はサンスクリット語で 『インドラの矢』 といいます
魔女が泣く度に
《インドラ》は雷や虹の姿で現れる
気がつくと
まじょねこ軍団の全員がテラスに出てきて
それぞれの場所で空を見上げていた
《インドラ》一緒にいてくれるなら
魔女はもう泣いたりしないから
