震災前のネパールで ~ロザイアの村 Ⅰ~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください


前回秋のネパールで

ゲストハウスのオーナーから、次回は僕が育った村に来てよ、と言われていた


それで今回、雑用を終えたところで彼の生まれ育った村に行くこととなった


そこはタライ平原方面、チトワン国立公園に近いラザイアという小さな集落


カトマンズからジープで5時間、ヘタウダという大きなバザールでローカルバスに乗り換え、40分ほどの村だ



       カトマンズの長距離バスやジープ乗り場は常にごった返している



移動するのは人間ばかりではない

車にはありとあらゆるものが乗せられる



       

           例えば母親と一緒のこの子供が持っているものは



       
                     ニワトリさん



ニワトリさん、長距離移動、頑張ってください



ヘタウダ行きのジープを待っている時

魔女の隣で果物売りインド人のおじいちゃんが

突然路地に向かう坂道を自転車に果物を積んだまま猛スピードで駆け下りだした

年を感じさせない脚力に驚く魔女


そのあまりの勢いにみかんが、林檎が地面に跳ね落ちて

おじいちゃんと一緒に坂道を転がってゆく


アイスキャンディー売りたちも次々とその後に続く


警察の取り締まりトラックがやってきたのだ


路上での無許可の物売りは禁じられており

横を走る警察のトラックには、運悪く、というか、逃げ損なって捕まったパニプリ売りが情けない顔をして屋台ごと乗っけられていた


そうしてトラックが去って行くと・・



       また戻って来て、何事もなかったように果物を売るおじいちゃん




         身を隠していたアイスキャンディー売りたちも戻って来た




さてジープでカトマンズを後しに、一路ヘタウダを目指す


途中ダキシンカリで豪雨に見舞われる

ここは良く雨が降る


そうしてダキシンカリを抜ける頃には雨は止む



                         道端の店




ジープの運転手は隣に乗った若い女性に心を奪われたようで

笑顔で彼女に話しかけながら、これ見よがしな運転をしてみせるのだった


そのお陰でひとりの乗客が発車間もなくから車酔で苦しむハメに陥った

私は車酔いの激しい後ろの席の男性を振り返ることなくビニール袋を渡した


彼はこれまで車というものに乗ったことがなかったようで

途中の休憩場所で車外に出たものの、とてもじゃないが立っていられない状態だった


こうして3時間ほどを苦しんだ男性は

もう我慢ができないという様子で

荒野のようなところでヨロヨロと下車して地面にへたり込んだ


その後彼はどうなったのだろうか・・



約5時間後ヘタウダに到着
ここからマイクロバンに乗り換えてロザイアを目指すわけだけど


あたりは既に宵闇に包まれ始めて



対向車のライトにやたら反射する運転席側の放射線状にひび割れたフロントガラスが気になるところだ



ロザイアに到着した時は既に夜の帳が降りていて




       早速の夕食   手前ライスの隣にあるのはデュロ(蕎麦がき)


地方ではこの蕎麦がきが良く食べられる



私の部屋に充てられたのは、ゲストハウスのオーナー、ラジェンドラの甥であるスラブの部屋

彼はラジェンドラにガイドを頼まれたと言い、かなり張り切っていた



食後、歯を磨きに外の水場に行ったら

水のせせらぎが聞こえた


側に川があるのか? とスラブに問うと

このすぐ下が川だという


行って見たい? と聞かれ、ふたつ返事で 行ってみたい! と答えた


暗い道をスラブが照らしてくれる灯りを頼りに土手を降りて川に向かう


河原に着いて、それまで見ていた足元から目を上げると

そこには、まるで夢のような世界が広がっていた



言葉が出ない・・


河原は陽炎のように黄色い灯りに染まっていた

その灯りはふわふわと揺れていて


それは何千という蛍の群れだ


手を伸ばすと掌に、腕に

蛍がとまる


そして私の手からゆらゆらと美しい光りが流れ出る


これまでにも蛍を見たことはあるが

これほど夥しい数の蛍の群れを、私は生まれて初めて観た



ジュン ギリ


ネパールでは蛍をそう呼ぶ

ジュンは月 ギリは虫 


月の虫はどこまでも流線に流れ如くに川面に浮かび

あまりに美しかった


私はこの夜の光景を一生忘れることはないだろう