ネパールの風に吹かれて ~マチンドラ バハール Ⅰ~ | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください


                     雪解け



今回セトマチンドラナート(マチンドラの白い観音様)を囲むマチンドラバハール(マチンドラの境内を囲む建物群)にてひとつの小さな出来事があった


ここでよく登場するカマラ、今回はその娘のサビナのお話



私はいつもマチンドラバハールを裏口から入る

観光客でごった返すタメルから、地元民でひしめくアサンチョークを通って行く道が苦痛なのだ

それらを通らず、裏道をちょろちょろ歩いて裏門に向かう道だと人通りも少なく、時間も大幅に短縮出来る


そうして仏様を拝みながらママの店に入るわけなんだけど


そこで突然ひとりの少女が後ろから抱きついてきた

思わぬことに驚き、振り向くと

そこには驚くほど成長はしていたものの、懐かしいサビナの見上げる瞳があった


魔女よりさらに驚いたのがその場にいたママとルナだった



サビナは幼少の頃より、どういう訳か魔女のことが大好きで

生まれて初めて喋った言葉というのが私の名前だったという


大人しい子で、とにかくただ私の側にいるだけで幸せな顔をしていた

最初に会った時、彼女はまだ2才ほどだったので

そこに理屈などはなかったと思われる







サビナの母親、カマラはマチンドラで朝はブジャ用の花を売り、午後からは境内の掃除をしている

忙しい母親に代わって、彼女に弟が生まれると母親の代わりに子守をした






赤ん坊がお腹を空かせた時に働く母親の元に連れて行き、乳を与えてもらう以外

幼いサビナは昼間の殆どの時間を弟の世話に費やした



       




マチンドラバハールを訪れる度に私たちは仲良く過ごしていたが

ある時から彼女は姿を見せなくなった


その時サビナは6才で

いったいサビナはどうしたのか、と問う私に

ママとルナは 彼女をきつく叱ったらひどく怒ってしまい、それ以来自分たちを敬遠するようになったと説明した



魔女が訪れると、彼女は遠くの柱の影から少しだけ顔を覗かせている

私は目が悪いので良く見えないのだが

それに気づいたママが、 「いらっしゃい」 と手招きすると、とたんに走り去ってしまう




「4年振りよ、4年!!」


満面の笑みを浮かべてママが4本立てた指を目の前に突き出す


サビナは10才になっていた


成長著しい子供の4年は驚くほどの変化を伴い、私を驚かせた


ママもルナもあれ以来現れなくなったサビナのことは日々気にしていた


それまでは、母親の仕事が忙しいので昼間の食事もおやつもママやルナと一緒だった

赤ん坊の頃からそうやってずっと娘のように面倒を見てきたのだから憂うのは当然だ



サビナにどんな心境の変化があって今回現れたのかはわからない


とにかく驚き、そして喜んだママは 「嬉しい、嬉しい!」 と大はしゃぎだ



サビナは空白の4年を埋めるかのように、魔女の世話をやいた


お茶を運び

食事をよそい

髪を梳かして結ってくれ

買い物を手伝い

共に店番をし

そうして一緒にバジャンを聴いた




       




       

           あの時赤ちゃんだった弟もこんなに大きくなった




                    店番も一緒に




       

                  サビナは片時も側を離れず





           私の髪を結い、いっぱいのお花で飾り付けてくれた




              4年ぶりの雪解けにママの感慨は深く・・