ジョン ブリアン
僕は《ボンネット》に《伐》から聞いた事をお話した
大切な伝言だから、いっしょけんめに思い出して絶対に間違えないように気をつけた
みんなは《ボンネット》と一緒に黙ってそれを聞いていた
僕はちゃんと《ボンネット》のお母ちゃんからの伝言も言った
ここは肝心だから絶対に忘れちゃいけない
《ボンネット》は、ただ黙って《伐》からのお話を聞き終わった
あんなに泣いてまで知りたがっていたのに
何でだか、その時《ボンネット》は泣きも喜びもしなかった
そんな《ボンネット》の様子に、僕らは戸惑った
僕たちは《ボンネット》に対してどういう風に接したらいいかわからず、みんなでシンとしていた
僕らは《ボンネット》がすごく喜ぶとか
懐かしくて泣いちゃうとかすると思っていたのに
だけど《ボンネット》は黙ぁ~っているだけ
僕には《ボンネット》が何を思っているのか分からず・・
だけど・・ お母ちゃんが元気なら・・
《ボンネット》はお母ちゃんの所へ帰りたいんじゃないかな
みんなもそう思って、きっと何も言えないんだ
みんなは黙ってあちこちに散らばった
《ボンネット》だけはいつまでも同じ所にいたけれど・・
その時、僕とユリぼうずは、ぼんやりと窓から外を見ていて
《水玉》と《ジンジン》は自分達の椅子の上で横になってた
《バブー》は猫ハウスのてっぺんにいて
《アゾ》はテリャスから外を見ていた
「あそぼうか!」
《ボンネット》が言った
僕らはそれぞれの位置から、思わず振り返った
ボンネット 「みんなであそぼうよ!」
バブー 「《ばぶ》、おにいちゃんと あそぶ~!!」
ユリぼうず 「よぉ~し、 追いかけるぞお~!」
バブー 「わ~い! おにいちゃん にげよう!!」
ボンネット 「《バブー》、こっちだよ!」
僕 「ねえ! 《伐》がくれたスーパーボールもあるよ!」
ユリぼうず 「じゃあ、それを高い所から落として!」
僕 「いいよ!」
ポ~ン~~
みんな 「わ~い! わ~い!!」
《ボンネット》は凄い速さでスーパーボールを追いかけて部屋中を走り回ったり
絨毯で爪を研ぐ真似をして体の前をうんと低くし、やけにふざけた格好をしてみせたりした
僕らはくたくたになるほど走り回った
《ユリぼうず》が最初に遊びを棄権した
それに続いて僕らもそれぞれはあはあ言いながら床で横になった
《ボンネット》は疲れたのか、ベッドに入って眠ってしまった
椅子の上には、あまり若くないせいか僕らとは一緒に遊ばないでた《ジンジン》と《水玉》がいて・・
僕 「《ボンネット》、 ほんとうはお家に帰りたいんじゃないのかな・・」
水玉 「・・かも知れないな」
ジンジン 「やっぱりお母ちゃんと一緒に暮らしたいに決まってるよね・・」
僕 「魔女に頼んだら連れて行ってくれるんじゃない」
ジンジン 「魔女、お母ちゃんの場所知ってるの?」
僕 「詳しい場所なら《伐》に聞けばわかるんじゃない?」
ジンジン 「《ボンネット》、行っちゃうかな・・」
そんな淋しい話をした
次の日
僕が目を覚ましたら、《ボンネット》は《バブー》と一緒に窓から雨のお外を眺めていた
《ボンネット》のあの日と同じに雨が降ってた
《ボンネット》は何を考えてお外を見ているんだろう・・
僕 「・・ねえ、《ボンネット》・・」
ボンネット 「なあに?」
僕 「・・お母ちゃんの所に帰りたいんじゃない?」
ボンネット 「どして?」
僕 「どうして、って・・」
ボンネット 「・・ぼくはここでくらすの」
僕 「どうして? お母ちゃんは元気だったんだよ、それに《ボンネット》を捨てたりしてなかった事もわかったんだよ」
ボンネット 「お母ちゃんはぼくをすてたんじゃなかったんだからそれでいい」
僕 「本当にそれでいいの?」
ボンネット 「ぼく、《バブー》のせわをしなきゃいけないし」
僕 「《バブー》の世話なら僕らでも出来るから・・」
バブー 「・・おにいちゃん、おかあちゃんとこ いくの?」
僕 「《ボンネット》のお母ちゃんが見つかったんだよ・・」
バブー 「・・」
僕 「だから・・」
バブー 「」
ボンネット 「《バブー》、お兄ちゃんはどこにも行かないよ」
バブー 「いかない・・?」
ボンネット 「ぼくは《バブー》のお兄ちゃんなんだからね」
僕 「《ボンネット》、我慢しちゃいけないよ」
ボンネット 「ぼくのおうちはここで、ぼくのかぞくはここのみんなだから」
僕 「いいの?」
ボンネット 「いいの」
僕は魔女にその事を言った
僕 「《ボンネット》は本当にそれでいいのかな・・」
魔女 「いいのよ」
僕 「いいの?」
魔女 「《ボンネット》にはもうすっかりここの家族の匂いが染み付いちゃってる、今更お母ちゃんの所に帰っても、お母ちゃんは違う匂いになった子供に混乱するだけだからね」
僕 「《ボンネット》はそれで帰らないの?」
魔女 「《ボンネット》にはそんな事わからないよ」
僕 「じゃあ、どうして?」
魔女 「さあね・・ きっとみんなとお別れしたくなかったんじゃない? お別れの辛さを知ってるから」
僕 「そうか・・」
魔女 「《ボンネット》が自分で決めた事だよ」
そうだね・・
僕らは小さな頃から色んな決心をしなければならなかった
そうやって何とか生きてここにたどり着いたんだと思う
運命と小さな決心が・・
今の暮らしに繋がっていったんだ
《ボンネット》&《バブー》