ネパールこぼれ話 | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


クリスマスの時にいただいたローストチキンを見ていて・・

ネパールのチキンサンドを思い出した


それで今日は魔女がネパールで遭遇したチキンサンドのお話を


10年以上も前の事

その頃は今のゲストハウスより多少ランクが上のホテルに泊まっていた

(そうやって考えると、どんどん安宿に向っているなぁ・・)


その日魔女は、そこのホテルのレストランで

メニューを見ながら夕食の料理を選んでいた


その間中、いつもウエイターが側に立って待つ

彼の名はカマルといって

とてもハンサムで気立ての良い青年なのだが・・

ずっと側にいられるとちょっとウザいのね


ウエイター 「決まりましたか?」


魔女 (今見始めたはかりじゃないか・・)


カマル 「・・」


魔女 「・・」


カマル 「あの・・」


魔女 「なに・・?」


カマル 「マヨゥネーィズがあるんですけど・・」


魔女 「マヨゥネーィズ・・ へえ、ほんと・・?!」


カマル 「はい!」


それよりもっと以前に泊まっていたホテルでは

朝食に、ホテル入り口の横にあるショーケースからパンを選び、それに挟むハムを選んで買ってはチャーと一緒に屋上に持って行ってヒマラヤを眺めながらそれを食べていたのだが、バターも塗ってないし、それこそバンを切ってハムを挟むだけのものだった


カトマンズも進化してるんだ・・

パンにバターが添えられるようになり

そして今回のようにマヨネーズなんて物まで


カマル 「メニューのこちらに、ほら・・マヨゥネーィズって」


魔女 「ハムサラダ ウィズ マヨゥネーィズ・・ チキン サンドゥィッチ ウィズ マヨゥネーィズ・・」


カマル 「ね! ね!」


魔女 「・・なんでわざわざメニューに 『 ウィズ マヨゥネーィズ 』 って書いてあるの?」


カマル 「ここにはマヨゥネーィズがあるから!」


魔女 「自慢・・?」


カマル 「きゃはっ!」


魔女 「自慢なんだ・・」


カマル 「マヨゥネーィズ」


魔女 「わかったから・・ じゃあ、チキンサンドゥィッチ・ウィズ・マヨゥネーィズにする」


カマル 「かしこまりました!」


暫くしてチキン サンドゥィッチと飲み物が運ばれて来た

それは例のウエイターによってうやうやしく私の前に置かれた

サンドゥィッチの周りには、フレンチ フライズがいっぱい


彼は少しだけ後ずさりして

私の斜め後方に位置した所にとどまり

私がそれを口にするのを覗き込んでいるのが肩越しに伝わって来て・・


その上、出来上がった料理を出す厨房の小窓からは

何人ものコックがひしめき合ってこちらの様子を伺っており

そんな彼らは、私に妙なプレッシャーを与えた


なんでマヨネーズ料理(それはちと違うか・・)を食べるだけでこんなに注目されけなければならないのか・・

何はともあれ、食べなきゃ


魔女 「 それでは、いただきます・・」


・・・ ん・・?

これは・・ なに?


あまい・・ え? 甘いじゃないか・・?

ジャリ・・ ジャリ・・

ザラメってる?


なんじゃ~!! このサンドゥィッチはぁー!


待てよ・・ 魔女が変なのか?


い、いや・・ やっぱ甘いよ

どこをどう食べてもチキンサンドが甘いよぉ


カマル 「マジョさん いかがでしょうか? 自慢のマョネーィズは」


魔女 「・・」


カマルは、近づいて

魔女が複雑な顔をしているのを見ると、それまでニコニコ顔だったのが、泣き出しそうなほどの心配顔に変わっていった


マズい・・ 

何だか知んないけど カマルが泣き出しそうだよ


カマル 「サ、サンドゥィッチ・・汗


魔女 「あ・・ あっ・・ 美味しいよ!」


カマルの顔は、突然光が差したように明るくなった

そして厨房の小窓を振り返った

コック達もニコニコ顔でお互いの顔を見合わせている


私は目を吊り上げ、声高で店の従業員にくどくどと文句を言っているフランス人みたいになりたくなかったから・・

文句を言われて泣き顔になっている純なネパール人たちを見たくなかったから・・

それに、これは手違いで

単に塩と砂糖を間違えてしまっただけの事なのだと

そう自分に言い聞かせ・・


それで・・ きれいに・・ 残さず・・ 食べた

かなりの量の甘いチキンサンドを食べた


そして、カマルや小窓から覗いているコック達に、にこやかに手を振られながらダイニングを後にした


翌朝、舞台は再びダイニングルーム

私はそこでまたしてもチキンサンドを注文していた


カマルは大変な笑顔でそれを厨房に伝えていた

厨房から元気な声が聞こえてくる

夕べのチキンサンドを、この外人は大いに気に入って今朝もまた注文している!

そんな雰囲気満載の厨房だ


もう手違いがありませんように・・

そう願いながら、私は出来上がりを待っていた


今度こそ従来のチキンサンドを食べるんだ

と、思いながらも・・

心の底には、そこはかとない不安もあった


元気の良い声で、厨房のコックがウエイターを呼んだ

いよいよだ・・


カマルが皿を高く持ち上げ運んで来た

何であんな持ち方をしているの?


カマルはいたずらっ子みたいな笑顔をして

見上げている私の前に仰々しく皿を置いた


な、何だこれ・・


それは

信じられないほど細く切られたキャベツ、ニンジン、キウリ、ラデッシュたちが・・ てんこ盛りの大皿


魔女 「・・」


カマル (得意顔)


魔女 「・・ サンドゥィッチ」


カマル 「ちゃんと野菜の下にあります、フレンチフライズもほら・・」


魔女 「野菜の下・・なのね・・」


カマル 「2度目のご注文なので、みんなで話し合って趣向を変えてみたました!」


魔女 「・・きれいね」


カマル 「きれいでしょ! さあ、どうぞ召し上がって下さい」


それは・・

実に食べにくかった

サンドゥィッチを食べようとしても

千切り野菜がだらだらとまとわりついてきて・・

とてもまともになんて食べられない、とんでもないサンドゥィッチだった


挙句

それは・・意に反さず

本日も甘かった

昨日より更に甘かった


フランス人は怒鳴るから嫌い・・

そう言ったカマルのつぶやきを思い出し

ついでにその場面も容易に想像出来た


それでも魔女は「いかがですか?」 と自慢げに尋ねるカマルと、既に厨房から出て来てしまっている、やはりにこやかな顔で並んでいるコック達に

「とてもおいしいかったよ、 野菜もあんなに細くて綺麗な彩で素敵だった」

と言っていた


優柔不断がそう言わせたのじゃない

彼らの人を喜ばそうとする一生懸命の姿に魔女が負けてしまったんだ


いいじゃないか・・ 甘いマヨネーズがあったって


まだマヨネーズの使い方が分からなかったあの時代

あの頃のカトマンズが懐かしいな


こんな楽しい思い出を残してくれたあのホテルは今もある

いつも通る道をちょっと逸れた所にある


カマルは・・ コックたちはまだいるのかな

人の出入りの激しい街だから

もういないんだろうな・・