A wheel of fortune ~ 運命の輪 ~ Ⅰ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

魔女


高級缶詰をバッグに押し込み

みんなの思いを残さず心に詰め込んで

今日も病院に向かう


魔女の顔を見るなり

受付にいた男性が足早に診察室へ入って行った

その人はじきに担当の先生を連れて戻って来た


魔女がバッグから缶詰を取り出そうとするより先に

急ぎ足でこちらに向かって来た先生が口を開いた


「ご案内します」


それだけ言うと

先生は2階の入院室に向かうエレベーターのボタンを押した

それがどんな意味なのかわからず

ここで今、《ジョン ブリアン》に会うという事が何を意味するのかわからず

思いがけない成り行きに戸惑った魔女は、言葉を失っていた


1つ目のドア

そこには何匹もの動物が入院していて


その奥の2つ目のドア

そこは酸素室 ・・

《ジョン ブリアン》のいる部屋だ


入り口で躊躇している魔女を先生が振り返った

それから《ジョン ブリアン》の酸素室の前に立ち

じっとその中を見詰めている


魔女は缶詰の入ったバッグを握り締め、ゆっくりとそこへ向かった



《ジョン ブリアン》が・・ 酸素室の中で私を見詰めている

大きな目で、しっかり歩み寄る魔女を目で追っている


「ゆっくり面会して下さい」


先生はそう言って部屋を出て行った


思わず酸素室のガラスに手をあてた

同時に《ジョン ブリアン》がそこに顔を寄せた


エリザベス カラーがガラスに当たって邪魔をする

それでも《ジョン ブリアン》は何度もガラスに顔を摺り寄せて・・

包帯を巻かれ、管に繋がれた体で鳴いた


魔女がガラスに顔をよせると

《ジョン ブリアン》もすりすりをしようと一生懸命に顔を動かした

だけどカラーが邪魔をして、どうしても上手くいかなかった


やっとの思いで顔をつけても、鼻先をつけても

ガラスの感触しかない事に

《ジョン ブリアン》の目が、見る見る悲しそうに雲ってゆく


「《ジョン ブリアン》・・」


そう呼びかけると

《ジョン ブリアン》は少し後ずさりをし

床に敷いてある紙のマットに、もみもみをし始めた

両手を交互に動かし、必死に自分の気持ちを伝えようと

目はしっかりと魔女を見詰めながら

一生懸命にその行為を繰り返した


どのくらいそこにいたんだろう・・

もう行かなきゃ、と思う度に

その気持ちに気づいたように《ジョン ブリアン》が何度も鳴く


よそ見をした僅かな隙に部屋を出た


肺の中の血と膿が、昨日から水に変わって来た

それは、相変わらず溜まるのだけれど

それを繰り返し繰り返し抜き取り、洗浄し・・

入院治療はまだまだ続く


「夕べ、持ってきていただいたご飯をあげてみたら食べたんですよ。 もう一息かも知れませんね」


先生が初めて不器用な笑顔を見せ

そうおっしゃった