ジョン ブリアン
魔女の子供の頃の話の続きがあるらしいんだけど・・
それは今度にして、今日は夕べの出来事を言います
昨日、魔女がジタバタと出かけようとしていた
何だかわかんないけど、ライブっていうのに行くんだってさ
帰りは遅くなるからね、って言われて
僕たちは
「え~!」 って言った
家族は早くに寝てしまって
僕たちだけになった
ちょっとたってから
《ユリぼうず》の目がキラ~ンと光った
僕はやな予感がした
いち早くそれに気づいた《ジンジン》が先制攻撃に出て
いきなり近づいて来た《ユリぼうず》をたたいたものだから・・
《ユリぼうず》の闘争心に火がついてしまった
たたかれてちょっとたったら
《ユリぼうず》の目が・・ 逆三日月になり始めて
《ジンジン》の隣にいた《インジゴ》の首を噛んだ
ところが《インジゴ》は利口で
噛まれてもまったく騒がないでじぃ~っとしている
《ユリぼうず》が精一杯ぎゅうぎゅう噛んでも
じぃ~っと我慢する
「つまんない・・」
《ユリぼうず》はそうつぶやくと・・
ぶん!! と《アゾ》の方を振り向いた
覚悟を決めていた《アゾ》は、すかさず唸り出した
飛びかかる《ユリぼうず》をかわして、飛びのく《アゾ》
そんな《アゾ》にますます気を悪くして
首をねじって、『やんのかよ~!』 体勢の《ユリぼうず》
それを見るなり《アゾ》はすごい速さで猫ハウスのてっぺんに飛び乗った
それを《ユリぼうず》は途中まで追いかけたが・・
落っこちてしまった
《ユリぼうず》は、落ちたその場で、仰向けになったままの顔でカメレオンみたいにして後ろを見た
そこで、《水玉》が椅子の上にいるのが見えたらしい
タン!!とすごい速さで体勢を立て直し
《水玉》の上に飛び乗った?
正確に言うと、飛び乗ったと思われたけど
寸前で突き飛ばされた・・
あぁ・・ ついに僕の番だ・・
僕はとっくからカーペットの上のひざ掛けにもぐりこんで
姿が見えないように必死で頑張っていたんだけど
「おい、おい・・」
《ユリぼうず》の声が近づいてくるじゃないかあ
ついにひざ掛けのすき間から《ユリぼうず》の、
あの逆三日月の目がのぞいた!
「ぎゃ~~~~!!」
僕も《インジゴ》風にすればいいんだ、と頭の中では分かっていても
つい、ギャ~!だの、シャ~~!だの言っちゃって
ますます《ユリぼうず》を興奮させる事になってしまった
僕は逃げても、逃げても《ユリぼうず》に追いかけられ
いじめられ・・ いじめられ・・
毛も抜けた・・
僕をいじめあきた《ユリぼうず》は
その後、勝手に興奮し続け
部屋中をわけもなく走り続けた
そして・・
台所にあったビニール袋の手下げの部分に首を突っ込み
そのまま ジャバジャバ言わせて走り回っていたけど
そうこうするうちに、それがお腹の方に行ってしまい
くいこんで・・
「い・・痛い・・ 痛い・・」
とうめきながら、動かなくなってしまった
《アゾ》が、猫ハウスから下りて来て
ぐったりした《ユリぼうず》のシッポの臭いをかいだ
それでも動かないと見ると
前にまわって、顔中の臭いもかいだ
それでも《ユリぼうず》は半開きの上目づいで、ぼーっとしたままだ
すごく遅い時間になって
やっと魔女が帰って来た
魔女の車の音が聞こえると、《ユリぼうず》はヨタヨタしながらドアの前まで行った
魔女 「ただいまぁ~、遅くなってごめんね」
僕ら 「おかえり」
アゾ 「マジョ・・ ユ、ユジ・・ ユジ・・」
魔女 「 《ユリぼうず》 がどうかした?」
ユリぼうず 「魔女・・ 僕・・ 僕、苦しい・・」
魔女 「わあ!どうしたの! ・・これ、取れないじゃないか!」
ユリぼうず 「く・・苦しい・・」
魔女 「すぐにはさみで切るから!」
魔女は、はさみでもって《ユリぼうず》のお腹にくいこんでいたビニール袋の取っ手を切った
その後、《ユリぼうず》のようすがおかしくなった
何度もトイレに駆け込んだり、床の上でおしっこをしようとしたり
ベランダのプランターに立てこもったり・・
そして今朝、《ユリぼうず》はますます変になっていた
朝からずっと痛々しい声で鳴き続けて・・
魔女 「わっ! 《ユリぼうず》、血尿じゃないか!」
ユリぼうず 「魔女・・ く、苦しいよ・・
病院、病院に連れてっておくれ・・」
魔女 「わかった、すぐに行くよ!」
病院で、《ユリぼうず》はぼーこーえん(膀胱炎)と診断された
具合が悪くなったら病院!という発想はまったく猫らしくないと思う
そして、ぼーこーえんがビニール袋のせいだとしたら
それはすごくマヌケな話だ